マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

NHK文化講座・・・消えたソグド人の謎

▶毎月の第三金曜日は、NHK文化講座「シルクロード物語」がある日だ。午後1時からの開講なので、20分前に千葉駅前にあるビルの一室に入って行くと、既に半数くらいの人達が来ていた。といっても参加者全体で10人と少人数で、しかも男性は私を含めて僅か3人だけだ。全員がマスクをしているので、通い始めて1年近くになるが、お互いの素顔を見たことがないという、いたって不思議な関係である。昨年は東洋文庫「法顕伝・宋雲行紀」をベースに、5世紀始めの中国僧「法顕」のインド求法の旅を辿った。これについては、既にこのブログに書いた。


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▶この4月からは、シルクロード交易の主役であったとされる「ソグド人」に焦点をあてて、この民族の興亡の歴史と、彼らの交易によってもたらされた文化・文物が、その後の中国や日本に与えた影響などを、素人にもわかりやすく教えていただく、ということが眼目となっている。講師は、前期に引き続き、NHKシルクロード取材班(第一部)の団長を務めた中村清次氏である。


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▶ソグド人とは、3世紀から8世紀にかけてソグディアナ(古代名。現在のウズベキスタンサマルカンドやブハラを中心とした地域)を拠点として、シルクロード交易に活躍した商業民族のことで、最盛期には中国の沿海部までコロニーを作って進出したとされているが、その実態は長いこと歴史に埋もれてしまっていた。1907年に、イギリスの探検家のスタインが、中国・敦煌西北の烽火台の下から8通のソグド語の文書(手紙)を発見したが、その中身は解明されることなく1世紀が過ぎた。しかし、最近になってフランスや日本の学者による解読が進み、同時に色々な考古学的な発見も重なって、急速にその実態が分かってきたのだ。

▶昭和58年2月には、NHKシルクロード特集第二部として「消えた隊商の民・・ソグド商人を探す」が放送され、現代に生きるソグド人の末裔の姿が初めて電波に載った。実は、この番組は最近再放送されたので、私も視聴した。NHK取材班(日本語)とソグド人の末裔の老人達(ソグド語)が、ロシア語とタジク語の通訳を介してつながったのだ。当時、取材陣がこの老人達と面会したのは、旧ソ連・タジク共和国(現在のタジキスタン)のザファラバードだが、実は彼らはその前は奥地のヤグノブという秘境の地にいた遊牧民の一部で、そのヤグノブには現在でも相当数のソグド人の末裔が暮らしているのだという。(※秘境ヤグノブのソグド人は、最近また別の番組で放送された。)

▶講座では、当時のビデオを時折見ながら中村先生の話を聞くのだが、先生からは色々な種類の話が次々と出てくるので、一時間半はあっという間に過ぎてしまった。この後、話がどういう具合に展開していくのか、前期のようなテキストが示されていないので不明である。しかし、奈良の法隆寺には、ソグド語の文字が書かれている香木が保存されていることも既にテレビで紹介されているので、あるいは飛鳥時代に日本にもソグド人が渡ってきた可能性があるというような、トンデモ話に発展していく可能性もある。それはそれで楽しみな展開ではある。