マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

声楽コンサートの夕べ



f:id:Mitreya:20220219155339j:image

▶表題を見ると驚くむきもあるかと思うが、声楽コンサートに行ってきた。実はこれが3度目だと言うと、周りから「おいおい、どうかしたのか?」という声が聞こえてきそうだ。声楽コンサートとは、藝大や音大で専門に声楽を習った人が、主にオペラなどで使われている楽曲を歌うコンサートなのだが、決してポピュラーな歌ではないので(※だいたい私は蝶々夫人しか知らない)、一般の人からみると敷居が高いだろう。昨日は、日本歌曲だけを歌う「瑞穂の会」が、午後6時から東京四谷の紀尾井ホールで催されたので、ここに行ってきた。

▶実は、このチケットはいただいたものである。今回の出演者の一人が私の親戚筋(母方の従兄)の娘さんで、チケットは彼女が手配してくれたのだが、これには少し説明がいる。彼女は現在前橋市を拠点にして音楽活動をしている若手の声楽家で、ピアニストである夫君と共に現在住んでいるのが、一昨年まで空き家だった私の前橋の実家である。簡単に言うと、私が大家で彼女が店子という関係なのだが、彼女の父親である私の従兄とは子供のころから一緒に遊んだ間柄なので、現在でも家族ぐるみで気の置けない付き合いをさせてもらっている関係だ。

▶今年の1月29日には、初台の東京オペラシティーでニューイヤー声楽フェスティバルと銘打った合同リサイタルがあり、こちらにも顔を出したが、この時はアマチュア部門とプロフェッショナル部門の二本立てで、彼女の出番はプロフェッショナル部門のラストから二番目だった。唯一英語での歌唱だったから(※他の人は何語なのか不明。イタリア語?)、聞いたときはなんだかホッとした気分になったものだ。

▶昨日の「瑞穂の会」は、14人の歌い手(全員ソプラノ)が日本歌曲だけを歌う会だが、やはり歌を聴くという点だけで言えば日本語の歌であっても難解である。演目は、例えば北原白秋萩原朔太郎谷川俊太郎などの有名な詩に、山田耕作中田喜直といった大御所の作曲家が曲をつけており、中には、百人一首の短歌に曲をつけたものもあるのだが、普通の日本の抒情歌の雰囲気とはだいぶかけ離れているし、私にとっては初めて耳にする旋律ばかりであった。しかし、門前の小僧、よくしたもので聴くに従い、人間の声(ボイス)の可能性が少しづつ分かってきた?ような気がするのは、三回通った成果かも知れぬ。

▶一つおいた隣の席には、娘さんのご両親(従兄夫婦)が座っており、こちらは当日雪が降っている前橋からこのコンサートのために東京まで出てきているのだが、この夫婦から生まれたとは思えない(※結局は褒めているのだから、ゴメンナサイ)娘さんの活躍に、私は感慨しきりであった。娘さん自身の研鑽努力はもちろんであるが、声楽家を志望する娘を育てあげるというのは、時間や費用面も含めて、両親にとっては人知れない苦労があったのではないかと、頭が下がる思いである。

▶ひとおおり皆さんが歌い終わったあとで、このコンサートの監修者の方が出てきて、彼の指揮で出演者全員が別れの歌を合唱した。終わってから簡単な彼の挨拶があったが、それを聞いて私は驚いてしまった。今回の出演者は皆さんプロまたはセミプロの方ばかりだが、14人の出演者の中に80歳を超える方が3人もいるということが告げられたからだ。確かに、途中、私より年配かなと思われる人がいるのは気が付いてはいたが、皆さん声のツヤや伸びが若い人と全く遜色がないので、さすがはプロと思っていたが、まさか80歳を超えているとは想像外のことであった。ちなみに、テレビによく出てくる流行歌手などは、この年齢で若い時と同じ声量を維持している人は皆無と言ってもいいくらいだから、さすがに声楽のプロというのは鍛え方が違うものだと感心した次第。

▶手元のプログラムには出演者の経歴と写真が掲載されており、これがまた皆さん若くて美人揃いで、思わずエッと叫びそうになってしまうのがミソなのだが、80歳を超えて紀尾井ホールの舞台上で、これだけのパフォーマンスを見せられるというのは凄いの一言である。まさに百聞は一見に如かずといったところ。終了後、隣席の従兄に、「お互いまだまだ頑張らないといけないね」と言ったら、「あんたも、まだ若いんだから?何かできることをやったら・・」と言われてしまった。従兄は私より年上だが、板金職人をやめて個人でリフォーム会社を始めており、実は私の実家も彼にリフォームしてもらっているのだが、おっしゃるとおりでございますと思うばかりで、返す言葉がなかった。

▶午後9時に紀尾井ホールを出て、四谷駅から総武線各駅停車で千葉まで戻った。家に着いたのは午後10時半頃だったが、夕食を食べていなかったので、ビールを飲みながら、昨日作り置きしておいたカレーを、カレーうどんに仕立てあげて食べるとこれが旨い。テレビをつけると、北京五輪の女子カーリングの準決勝が中継されていた。試合は、日本が最終予選で完敗したばかりの強豪スイスを撃破して、見事決勝進出を果たしたので、喜びのあまり夜更かししてしまい(※翌日の土曜は特に用事もないしね)、FM東京のジェット・ストリームを聴きながら眠りについたのは、午前1時近かったか。