マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

その名前、なんとかなりません?

▶昨年から四国遍路を始め、先週3回目の区分打ち(行程を分割して回る)を終えて帰ってきた。最終日は、四万十町にある窪川駅から高知駅まで特急列車(二両編成なので、かろうじて列車と言える。ちなみに各駅停車は一両編成で2~3時間に一本しかない。)を使って戻ったが、JR四国の経営が厳しい事情は、このあたりにもよく出ている。ところで、今回取り上げたいのはJRの話ではなく、市町村の名前の話。

▶四国から帰る前日、国道56号線四万十町に入ったところにある遍路休憩所で、街道歩き(遍路ではない)を趣味にしている人にあった。この方と今日はどこまで行くのかと話をしていて、四国に全く別の自治体として、四万十市四万十町があることを知った。私がその晩泊る予定の岩本寺の宿坊は、四万十町にあるが、その人は四万十市まで電車を使って行くという。聞けば、この辺りの人は、四万十市は中村と呼び、四万十町窪川と言っているとのこと。全く分かりずらい。下の道路標識の写真をごらんあれ。ちなみに、四万十市には四万十町という町があって、ここの住所は四万十市中村四万十町というから、さらにややこしい。
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▶原因は平成の市町村合併にあった。2005年に、高知県西部の拠点都市であった中村市と土佐村が合併して、四万十市ができる。名前は市内を流れる四万十川から採ったのだろう。しかし、古くからこの地域は中村で通っていたので、この辺りの地形は中村平野と呼び、四万十市のJRの中心駅は中村駅である。2006年、中村市の東隣地域の窪川町と大正町と十和村が合併して一つの町となったが、この時に最大の窪川町の名前をとらずに四万十町を名乗ったことから、混乱が続いているという訳だ。国土交通省は諦めて、道路標識には写真にある通り、今でも旧中村、旧窪川という名前を併記している。

▶要するに、分かりやすさより、地元の都合(エゴと言ったら言い過ぎか)を優先した形だが、その経緯が面白そうなので、今回改めて調べてみると、全国には同様の事例がゴロゴロ転がっている。総務省の責任か県の責任かは知らないが、名称の決定にあたっては、もう少しなんとか調整できなかったのかと、思わずにはいられない。

▶北海道の釧路市の隣に釧路町がある。福井には越前市越前町がある。広島には府中市府中町があり、マツダの本社は府中市ではなく府中町だが、地元の人は混乱を避けるために、府中町安芸府中と呼ぶらしい。府中町マツダ効果で人口が増加し、既に5万人を超えているので市制移行も当然考えられるが、まさか府中市とはならないだろう。ちなみに、東京の府中市と広島の府中市は、昭和29年に、ほぼ同時に府中市となっており、この時点では全国で同じ市名を持つ自治体は、ここだけだったそうな。

▶市町村の名前で、勘弁してほしいと思うのは、伊豆半島にある市町村。ここは車やバイクで走ることが多い観光地で、当然外部から来る人は多いのだが、名前が伊豆だらけで、走っていて面食らうことが多い。東伊豆町西伊豆町南伊豆町までは方角が明示されているのでまだいいが、2000年に修善寺町を中心に周辺の町が合併して伊豆市が誕生。2005年に伊豆市の北隣の町が合併して伊豆の国市ができたから、外から見ると位置関係や大きさが分かりずらくなった。伊豆の国市は、市の名前を一般公募で決めたというから、県としても口が出せなかったのか。まあ、住んでいる人がいいのだから、外部から文句をつけるのは大きなお世話だが、結果として伊豆半島には伊豆と名の付く自治体が五個もできてしまった訳で、皆んな、よっぽど伊豆が好きなんでしょうな。

▶紛らわしいということではないが、名前だけを見ると、一体この県の中心はどこにあるのだろうかと思ってしまうのが、山梨県。だいたい、北海道や九州に住む人からすると、山梨県がどこにあるのか分からないという人も結構いるのではないかと思いますが、市名を聞いただけでは、県庁がどこにあるのか分からないでしょうね。山梨の人は、どう思っているのでしょうか。そこで、問題。

山梨県の市で、最も中心的な役割を果たしている市はどこか。甲斐市甲州市中央市南アルプス市、そして山梨市。外部の人から見ると、山梨県山梨市が中心か、いやいや名前からし中央市ではないか、いや山梨は甲斐の国だから甲斐市か、いや昔から甲州と呼ばれていたので甲州市か、いや一番でかいのは南アルプス市では、と思う人も多いのではないか。答は、いずれでもなく、県庁所在地の甲府市。山梨にある市は、名前だけはどこも横綱級である。

▶ネットを見ていたら、横浜市緑区に住んでいる人が、北隣の相模原市緑区の名前が紛らわしいのでやめてほしいと言っていた。近いと紛らわしいと感じるのかもしれない。ちなみに、千葉市にも緑区があり、私は若葉区に住んでいるが、緑も若葉も同じようなニュアンスで、しかも隣接しているので、私にはこちらの方が分かりにくく感じる。

▶と思っていたら、鉄道の駅にからんでこういう例もある。埼玉県には、ふじみ野市富士見市がある。ところが東武東上線富士見市の駅はふじみ野駅であるからややこしい。もともとは富士見市があって、1993年に東武東上線の駅が開業するに際し、駅名の公募で「ふじみ野駅」と決まった経緯があるのだそうだが、2005年に富士見市に隣接する福岡市(埼玉県です)と大井町(埼玉県です)が合併するとき、富士見市富士見市民は、ふじみ野市という名称は紛らわしいので避けて欲しいと要請したが、聞き入れられなかったと云うことのようだ。ということで、隣の市の名前を冠した駅が富士見市にある。

▶そう言えば、先日のNHKの「日本のお名前」という番組を見ていたら、文京区大塚の北側に豊島区南大塚という地名があって混乱があると取り上げられていた。まあ、混乱といっても、名前の由来を知ること自体がある種の娯楽と捉えられているのだから、大したことはない。そもそも名前の決定にあたっては、それぞれのやむにやまれぬ事情があるので、赤の他人がとやかく言うのは止めてくれというのは十分理解するが・・・・その名前、本当になんとかなりません?