マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

健康診断で肝を冷やす


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▶年に一度、日比谷のクリニックで、健康診断(人間ドック)を受けている。ここの先生とは、私が現役で働いていた頃からの長いつきあいだ。お蔭様で、色々融通が利くし、何より健康上の異変があった時、この先生の専門医ネットワークがとても頼りになる。また、私の経年の健康データは全てここに保管されているので、いつでも現状との対比分析は可能であり、この面からの信頼性はとても高い。

▶今年も3月の初めに健康診断を受けた。私には逆流性食道炎の持病があるため、毎年胃の内視鏡検査を受けているが、健診はこれがメイン・イベントだ。それを含め一通りの検査が終わり、とりあえず出た結果データをもとに先生の内診を受けたが、基本的には問題ないとの所見で、その日は、いつも服用している胃薬とコレステロールの抑制剤のみを処方してもらい、家に帰った。

▶ちなみに胃の内視鏡検査は、初期のころは地獄のような苦しい検査と言われた時もあったが、最近はファイバー・スコープの直径は格段に細くかつ柔軟になっており、しかも検査時には軽い麻酔まで用意されているから身体的にはいたって楽だ。麻酔が効いて検査が終わってもまだ夢見心地で、このため別室で20分程休むのだが、これが楽しみになるほど気持ちがいい(特に寝不足の場合はね)・・・というのも困ったものだ。

▶さて、3月25日の午後、4月から予定している四国遍路用に新しいトレッキング・シューズの購入を終え、自宅に戻って郵便受けを開けると、先の健康診断結果通知が届いていた。既に、先生から概ね問題ないと言われていたので、何の不安もなく封筒を開けて書類に目を通す。すると、精密検査が必要との項目が見つかった。もう一度しっかり確認すると、胸部X線撮影で、肺に結節の疑いがあるとの所見が書いてある。いったいこれは何のことだろう。

▶いやな思いを抱きつつ、早速ウェブで調べてみると、肺に結節があるとは、肺がんの疑いがあるということだと分かった。おいおい、これは一大事だ。確かに平均余命が延びた現代は、一生のうちに2人に1人はガンに罹る時代であると言われており、だから自分もいつかはガンを発症するかもしれないとの思いは無くはなかったが、まさかこのタイミングでこんな事態に見舞われるとは思ってもいない。それに私は、既に妹と妻をガンで失っている。今度は自分かと気分がスパイラル状に落ち込んでいく。と言っても、ガンだと決まった訳ではないとようよう落ち着きを取り戻して、早速クリニックに再検査の予約を入れた。

▶3月28日に日比谷のクリニックを訪れる。健診で撮影した胸部X線写真を前にして、いつもの先生が説明してくれる。胸部X線写真の読影は、間違いがあってはいけないので、自分の他にもう一人の医師にもダブルチェックしてもらうのだそうだが、その医師が私の右肺の僅かに白く映っている部分を、結節の疑いと診断したのだという。万が一のことを考えたらCTによる精密検査を受けた方がいいとのアドバイスに従い、当日その足で、八重洲にある検査センターに行った。この辺りの段取りが、極めてスムーズなのは実にありがたい。

▶CT検査とは、X線とコンピューターにより胸部の断層を連続的に撮影するものだが、検査自体はあっという間に終わって、結果は一週間後にクリニックに連絡するということになった。私は、4月7日より四国遍路に行く予定を立てており、検査結果はその前の5日に明らかになるのだが、もしCTで異常が見つかっても、四国遍路だけは予定どおり行こうと思い定めた。それにしても、贅沢は言わないから少なくともあと10年くらいは健康で過ごしたいものだと思いつつ、4月に入ってからは一人不安な日々を過ごした。仏陀は「諸行無常諸法無我一切皆苦」と言ったとか。まったく、人間はこんなにも弱いものなのかと、深く自覚する。

▶「運命の」というと大げさだが、実際そういう気持ちで、4月5日に結果を聞くために日比谷のクリニックに出かけていった。診察室に入ると、私の不安そうな顔を見たいつもの先生が、開口一番「大丈夫だったですよ」と言ってくれた。ああ、助かったかと、安堵の吐息をもらす。先生がおもむろにCT画像の説明をしてくれたが、要するに腫瘍のようなものは全く見当たらないとのことで、結果は全てオーライということになった。

▶その後、なぜ最初の胸部X線画像に白い影が映ったのかという説明をしてくれたが、要するに肺の内部を走る血管が交差するような部分が、時として結節に間違えられるということで、定期健康診断ではよくある事象とのことだった。心配した10日間の日々はいったい何だったのかということになるが、まあ、肺については少なくとも今後5年くらいは大丈夫とのお墨付きをもらったのだと思い直し、気分的にも結果オーライとなった。

▶その日は、夕方から千葉で花見を兼ねた飲み会が予定されており、天気は雨模様だったので急遽花見は中止し、飲み会だけを駅近くの海鮮焼きの店で開催した。外は雨が降っていたが、私の気分は爽快そのもので、一度縮んだ命がまた延びるとはこのことだと実感する。さあこれで安心して遍路に出かけられる。集まったメンバーの皆さんからも「よかったね」と声をかけられたりして、冷たいビールが一層美味しくなったのは言うまでもない。