マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

再び日経新聞とともに


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▶5月1日の朝、郵便受けに日経新聞が投函されていた。一瞬誤配達を疑ったが、すぐに2ヶ月程前に新聞を変える契約を結んだことを思い出した。それまでは読売新聞を購読していたのだが、訳あって読売から日経に変更することにしたのだ。すんなりと契約更改できると思ってやって来た読売新聞の販売員は、私が日経に変えたいと言うと、なんとか両方購読してもらえないかと持参した景品をチラつかせて粘りに粘ったが、結局は将来は読売に戻すとの口約束に納得して帰っていった。(※ちなみに、景品はいただきました)

▶私が現役で仕事をしていた頃は、読売と日経の二紙を購読していた。出勤前に読売新聞にサッと目を通した後、日経はもっぱら通勤電車の中で読んだ。当時は遠距離通勤だったが、幸い電車の席に座って日経が読めたので、長い通勤時間が(帰りを除けば)苦になることは全くなかった。この間、日経は殆ど隅から隅まで目を通したから、私のビジネス上の知識は、一部の読書を除けば殆ど日経から得たと言っても過言ではない。この習慣は変わらず20年以上も続いたのだが、それは私にとって、サラリーマン人生の貴重な一部となっている。

▶その生活も、3年前の定年とともに終止符が打たれた。定年後の「終わった人」に日経新聞は必要なかったし、年金生活者が新聞二紙を購読するのは荷が重いので、読売新聞一紙に絞ったのだ。本当は日経を継続したかったのだが、当時元気だった妻が、日経に難色を示したので、結局読売に落ち着いたという訳だ。ところが、肝心の妻は突然逝ってしまい、手元には読売新聞だけが残ることになった。

▶妻のいない引退後の一人暮らしは、時間だけがイヤになるほどたっぷりある。さぞかし新聞をじっくり読めるだろうと思いきや、実際に読む時間は毎日10分程度といたって短い。まず読売の裏面のテレビ欄にサッと目を通した後、社会面から逆にページをめくっていく。しかし、残念ながら興味を引くような記事が殆どないというのはどうしたことか。だいたい昔から読売が得意とするのは社会面と家庭面で、なるほど私には人生相談と家庭料理のレシピと医療の話といった生活情報くらいしか目にとまらない。

▶その読売は、だいぶ前に新聞の活字のポイントを大きくした。結果的にページあたりの字数が相当減少してしまい、活字が大きいのと中身が薄い(※興味も薄い)ので、まるで見出しを読むのと同じくらいのスピードで全体に目を通してしまう。ある日のこと、その日真剣に読んだのは、週刊誌の新聞広告とスーパーの折り込みチラシだけだったという事実に気がついて、我ながら愕然とした。

▶それでも日曜の書評欄くらいは何とか読んでいるが、だいたい今の読売新聞は、どの層をメイン・ターゲットに想定して紙面を作っているのかよく分からない。少なくとも、私が必要とする(生活の知恵以外の)情報は、読売の紙面には少ないようだ。

▶さて、1日の朝は久しぶりに手にした日経新聞を前にして、大げさでなく胸がときめいた。かつてそうだったように、まず最終面の文化欄を開くと左上隅の「私の履歴書」が目に飛び込んでくる。5月からは漫画家の里中満智子さんが執筆担当で面白そうだ。また下の方には、安部龍太郎の「ふりさけ見れば」という小説が連載中だ。ご丁寧にこれまでのあらすじが載っているが、唐の玄宗皇帝時代に遣唐使で派遣された阿倍仲麻呂が主人公で、これまた私の興味にドンピシャリと合っている。(※ちなみに小説にはNHK文化講座で勉強したソグド人の安禄山が登場している。玄宗皇帝自身も、漢人ではないと言われているので、なるほど阿倍仲麻呂が重用された訳も腑に落ちるが、これは別の話)

▶ページをめくると社会面は左面1面だけで、右面はサイエンス欄で、江戸の飢饉と巨大噴火の関係を詳説しているのも好ましい。1日はたまたま日曜だったので、当日の日経は日曜特別版として文化面が充実していた。2日からは平日版だが、メトロポリタン美術館の一面広告が載っていたり、スポーツ欄のプロ野球に関する専門的なエッセイなども読んでいて面白い。また読売と異なり活字が小さい(※かつてはこれが普通だった)ので、読む量は必然的に増えることになるが、これは私的には好ましい。

▶もちろん、メインの経済記事は読売と比較するのも可哀そうなくらいに充実していて、日本製鉄とトヨタ自動車の電磁鋼板を巡る特許訴訟に、三井物産が引きずりこまれた(※特許訴訟はメーカー間の問題で、扱い商社はこれまで無縁だった)との特集記事は、思わず身を乗り出して読んでしまった。なお、昔から国際面や政治面の記事も、経済面に劣らず思いのほか充実しているが、これは日経がフィナンシャル・タイムズを傘下に置いたこともプラスに影響しているはずだ。

▶という訳で、5月からの私の生活は、再び日経新聞とともに新たな一歩を踏み出すことになった。毎朝、郵便受けに日経を取りに行くのが楽しみである。

▶さて「終わった人」である私が、わざわざ読売から日経に新聞を変えたのは、この夏から月に1~2回、とある会社の手伝いをすることが決まったことがキッカケとなっている。このところ四国遍路に忙しかった私が、読売をやめて再び日経を読み始めたと妻が知ったら、さて一体どんな反応をしたことだろうか・・・。