▶2023年3月に1年半をかけた1200㎞に及ぶ四国遍路の旅を終えたあと、しばらくは寺巡りは棚上げして、6月には一人でパリに遊びに行った。しかし基本的にはヒマを持て余す身なので、その年の秋から今度は坂東三十三観音巡りを始めることにした。四国は全行程徒歩で巡礼したが、坂東三十三観音は関東一円に広がっているので、基本はバイクとクルマ中心で回ることにした。正直、四国遍路ほどには気合が入っていないこともあるが・・・。
▶23年10月、バイクを使ってまず茨城にある23番札所正福寺(観世音寺)から周り始め、先月末に行った神奈川の6番長谷寺(厚木)、8番星谷寺(座間)を含め、これまで21札所を参拝したので、ちょうど2/3が終わったことになる。四国遍路と比べるといかにもスローペースだが、こちらは巡礼と言うより物見遊山に近いので、これはこれで良しとしている。
▶周り方にしても、四国遍路の場合は徳島の1番霊山寺から最終の香川の88番大窪寺まで計画を立てて順番通り回ったが(※これを順打ちと言う)、坂東三十三観音はその時の気分次第でランダムに回っているのが大きな違いである。また四国遍路は一人で歩いたが、坂東三十三観音巡りは、気の合った友達と誘いあって気軽に周っている点も異なっている。
▶先週は、横浜に住む友人がクルマを出してくれるというので、東戸塚まで電車で行き、駅で友人にピックアップしてもらって6番長谷寺と8番星谷寺を参拝する計画を立てた。28日の当日は横須賀線の電車に遅れが出て、友人との待ち合わせに遅刻してしまいヒヤヒヤしたが、10時半過ぎに無事に駅前でピックアップしてもらう。
▶東戸塚からは、環状2号・保土ヶ谷バイパス経由で東名高速に入り、厚木で降りてそこから国道129号線経由して県道60号に入れば、あとは6番長谷寺までは一本道となる。このあたりは緑が豊富で、友人が運転するクルマでのドライブも気持ちがいい。正午前に長谷寺に到着した。
▶神奈川には長谷寺という名の寺が二つあり、江の島近くの4番長谷寺(はせでら)が長谷観音として有名だが、6番長谷寺(ちょうこくじ)は厚木市飯山の白山自然公園の一角にあり、こちらは昔から飯山観音として親しまれている。今年は開山1300年にあたる年なので、本尊の十一面観音が特別御開帳されているが、我々が訪れた28日は残念ながら開帳はされていなかった。
▶山の中腹にある境内からは東南方向に相模平野が広がり、厚木や座間の市街地はもちろん、遠くには横浜なども見える。平日の正午なので訪れる人もほとんどなくて、境内は森閑としている。室町時代に植樹されたとされる樹齢400年にもおよぶ巨大なイヌマキの木は、「かながわの名木100選」に指定されているとか。ランチ前だったので、御朱印をいただいて早々に引き上げた。
▶長谷寺を後にして門前の道をそのまま辿ると清川村に入る。ここは神奈川県では唯一の村だそうだが、村の北部には関東屈指の貯水量を誇る宮ケ瀬ダムがあるので有名だ。清川村では道の駅清川で名物の豚丼のランチを食べた。当日は水曜だったが、偶然にも午後2時から宮ケ瀬ダムの観光放流が見られるので行ってみないかと友人から提案があり、せっかくなのでダム見物をすることにした。
▶道の駅を出て県道64号線を北上すると、しばらくして左手に宮ケ瀬ダム湖が見えてくる。午後2時の放流までやや時間があったが、ダム湖の堰堤近くの駐車場に行こうとするも満車の為クルマを止められず、右往左往しながら周辺駐車場を探したが見つからない。ほぼ諦めかけたところで念のため先ほどの駐車場まで引き返すと、幸運にも10台しかない駐車場の最後の1台分が空いていた。こういうラッキーもある。
▶午後2時からのダムの放流はなかなか見事だった。二つの放流口から毎秒30トンの水が巨大な白い帯となって50メートル以上も落下するさまは、感動的で迫力満点だった。かつて大学の友人たちと黒部第四ダムの放流を見たことがあるが、宮ケ瀬ダムの放流は、直下から見上げることが出来る点で黒部に劣らず素晴らしい。良いものを見せてくれた友人に感謝、感謝。
▶その後は座間まで戻って小田急線座間駅近くの8番星谷寺に行った。午後3時過ぎに到着。こちらは読み方が難しいが星谷寺(しょうこくじ)と呼ぶそうだ。開かれたのは平安時代と古いが、観音堂を始めとして堂宇の建築は比較的新しい。この寺には古くから「星谷寺の七不思議」の言い伝えがあるが、昼でも星が見えると言われる「星の井戸」を覗いてみると、かなり深い水底に覗いた自分の顔が映っていた。
▶時間が少しあったので、座間から東戸塚駅まで戻って一休み。駅近くのレストランで軽い食事をとって友人と別れたのは午後6時過ぎだった。東戸塚から乗った上りの横須賀線は平日のためか混んでいた。自分が運転した訳ではないが心地よい疲労感で、電車の中で居眠りしながら千葉まで戻った。