マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

坂東三十三所観音巡りを始める

▶愛車バーグマンのバッテリー充電が完了し、自賠責保険も更新した9月30日に早速外房方面のソロ・ツーリングに出かけた。この時は、297号線で大多喜に向かい、途中に雨にたたられつつも勝浦の石松食堂で旨い地魚の刺身定食を食べ、午後3時には自宅に戻ったが、これならまだ十分走れると実感した。10月に入ったら本格的にツーリングプランを立てようかと思ったものの、直近はOB会や色々予定が重なり、なかなか予定が立てられない日々が続いた。

▶明けて10月第二週目は、天候の具合を見ながら遠出の可能性を探ったが、最大の問題はどこに行くのかという目的地が定まっていないことだ。バイクに乗り始めてからかなりの年数が経過し、関東近県の目ぼしいツーリング・スポットは概ね行き尽くしてしまった感がある。12日も天気が良かったので出かけようと思ったが、前日に打った6回目のコロナワクチンの副反応で左上腕部が痛むので、大事をとって終日おとなしく家にいた。

▶13日の朝は午前5時に目が覚める。ベッドの中で今日こそはツーリングに出かけようと意気込んだが、さてどこに行くか行き先が思いつかない。書棚から関東近県の地図を引っ張り出して、ベッドの上であれやこれや候補地を探していると、茨城の笠間稲荷が目についた。ここには数年前の菊祭りの時に行ったきりだが、地図をよく見ていたら近くに正福寺という寺を見つけた。念のためどんな寺かと手元のスマホで調べると、坂東三十三観音の第23番札所とある。

▶見たとたん、友人が坂東三十三観音巡りを始めた話を思い出した。今年四国遍路を無事に結願した身として、坂東三十三観音のことは知ってはいたが、所詮は四国遍路の亜流としてしか認識はなく、友人の話を聞いても、これまで正直ピンとこなかったのである。それがスマホを見ていたら、茨城県には21番日輪寺から26番清瀧寺まで6か所の札所があることが分かり、バイクで行くなら比較的簡単に回れそうな気がしてきた。

▶そもそも観音様巡りとは一体何か。昔から日本では観音信仰が盛んで、最初に京都や大阪周辺にある代表的な三十三所の観音様を巡る「西国三十三所観音霊場巡礼」が成立した。四国遍路と一緒で、成立時期はよく分かっていないが、鎌倉時代になって、これを真似た坂東三十三所観音巡りが成立する。話はこれで終わらない。誰が考えたのか知らぬが、秩父地方には観音様を祀る小さな寺が沢山あるので、ここもまとめて別途秩父三十三観音にしてしまえということになる。しかも、西国と坂東と秩父の観音を全て廻れば九十九だが、切りが悪いので秩父に一ヶ所加えれば全体で日本百観音になると考えた人がいて、秩父は三十四所となったとか。全く昔の人は偉かった。

▶私はもともと四国遍路が終わったら、五木寛之の随筆「百寺巡礼」に紹介されている全国の名刹をゆっくり廻ってみようかと考えていたが、さしあたってバイクツーリング先をあれこれ考えているなら、坂東三十三所の観音様でも廻ってみるのも悪くはない。四国遍路とは異なり、こちらはもっぱら観光目的だが、とにかく始めてしまえばあれこれ行き先を悩む必要がなくなるのが何よりありがたい。

▶という訳で、すぐに飛び起きて準備を始めた。と言っても、四国遍路のような白装束や輪袈裟や杖は必要ない。歩くわけではないので、靴はバイク用のスニーカーで十分だ。それでも、納経帳と線香・ローソクくらいは用意する必要があるが、これは現地で調達すればいい。回る順番も気にする必要はない。地図を調べて、まず最初に笠間の23番正福寺に行き、そこから千葉に戻る途中の24番楽法寺雨引観音)、25番大御堂、26番清瀧寺に立ち寄ると行程の具合がよさそうだ。

▶午前7時半に家を出て、成田から408号線で筑波方面に向かい、牛久で6号線(水戸街道)に入る。土浦を過ぎて石岡から155号線に入ったが、信号も少ない田舎の道を快適に走り、11時に笠間に到着した。まずは前回も訪れた笠間稲荷に行く。こちらは京都の伏見稲荷、佐賀の祐徳稲荷と並ぶ日本三大稲荷神社の一つであるが、それほど大きな構えの神社ではなくて、やや拍子抜けの感がぬぐえない。菊祭りは21日からとかで、平日の境内はいたって静かだった。
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▶そこからバイクで2~3分のところに目的の第23番正福寺がある。四国遍路の場合、殆どの人は徳島の第1番霊山寺から巡礼を始めるが、坂東三十三所観音巡りは、そんなことに拘ってはいられない。現地に行って驚いたのは、寺の入り口の参道の幅目いっぱいに新しい納経所が立っていて、御朱印はこちらと書いてある。しかし本堂へ行く道が完全に納経所に塞がれているので困っていると、後から来た人が、納経所の軒下をすり抜けて行くんですよと教えてくれた。驚いたが、本当だった。参拝を済ませてこの納経所で納経帳を購入し、同時に御朱印をいただいたが、何だか四国遍路を再開した気分だ。
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▶次は24番雨引観音だが、途中50号線沿いのラーメン屋で昼食をとる。そこから田舎道を南下して20分程走ると雨引観音の看板が見えてきた。さきほどの正福寺とは異なり、こちらはかなり大きなお寺で駐車場も立派だ。私はここも2度目だが、前回は御朱印などもらわなかったので、今回は御朱印をいただく。ところで、四国遍路では御朱印の料金は一律300円だが、坂東三十三所観音は何故か500円。高い気もするが文句を言っても始まらない。
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▶次の25番大御堂は筑波山にある。筑波山へはバイクで何度か行っているが、大御堂へは参拝したことがなかった。場所を調べたらケーブルカー発着場のすぐ隣だ。近づくと土産物屋の客引きが手招きしてうるさいのだが、無視して大御堂の駐車場入口を見つけてバイクを停めた。ここは正式には筑波山中禅寺といい、本尊は千手観音菩薩である。ここが東京の護国寺の別院であるとは初めて知った。なかなか立派な寺で、そこからの眺めがとてもいい。
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▶大御堂を出たのが午後2時半過ぎ。ここから本日最後の26番清瀧寺に向かう。二輪のメッカと言われるクネクネ道を下りるとようやく走りやすい道に入った。ここはフルーツ街道と名付けられていて、道端で柿やクリを山積みにして売っていた。バイクを停めて柿を買う。土浦に近い坂東26番清瀧寺は質素な観音寺だった。思えば四国遍路には35番札所に同名の清瀧寺があり、こちらはとても立派な寺であるのだが、比べると坂東三十三所の落差が激しい。
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▶本日最後の参拝を終えると午後3時半だった。そこから土浦市街まで一旦戻り、あとは来た時と同じ道を千葉まで戻った。家に着いたのは午後6時で既に周囲は暗かったが、こうして坂東三十三所観音巡りが始まった。