マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

四国遍路日記(6ー3)

▶昨晩泊まった部屋には、遍路関係の本が山積みしてあった。どれでも好きなものを手にとって見てくださいという趣旨のようだが、よく見ると、同じ本が2~3冊ある。いずれも個人が趣味として出版したものを、この宿の主人に送ってきたようだ。

▶その中で少し毛色の違った本を見つけた。「雲辺寺古文書」という本で、雲辺寺に保存されている代表的古文書の原文を、現代語訳付きで掲載した学術的なものだ。寺が何かの記念事業として編纂したものらしいが、なぜか民宿岡田にある。以下はこの本を読んで知ったことである。
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▶第66番札所雲辺寺は、香川県徳島県の県境に位置する雲辺寺山の山頂に広大な寺域を擁する名刹で、古くは四国高野とも呼ばれていた。空海は、故郷の讃岐に寺を造る(後の善通寺)ための用材探しに雲辺寺山に入ったところ、この場所をいたく気に入って、一夜にして寺を建てたと伝わるのが雲辺寺である。

雲辺寺は、その位置関係から阿波と讃岐の関所寺として機能していたことが知られている。だが、直ぐ西隣が伊予なので三国の関所を兼ねていたという話もあるが、詳しくは知らない。ところで雲辺寺の現住所は阿波徳島県にある。しかし伊予の65番三角寺の次に位置する札所として、通常は讃岐香川の66番札所として扱われているから、話はややこしい。

▶現在、雲辺寺に参拝する場合、通常は観音寺市内からアクセスする。車道が頂上まで通じているし、観音寺市内の山麓から雲辺寺近くの標高916mの山頂駅まで、高低差657mを2594mのロープウェイが結んでいる。毎秒10mのスピードで上れば、約7分で山頂に到着するので、雲辺寺に参拝する人々の殆んどは、このルートを利用するのが一般的。

▶このルートを仮に表ルートとすると、順打ちの歩き遍路の場合、裏側の徳島側から登る裏ルートを利用する。具体的には、愛媛の65番三角寺を参拝して、旧伊予街道(現在の192号線)を東進し、境目峠を超えて徳島にはいり、池田町の雲辺寺登山口から2時間かけて登るルートだ。

▶民宿の主人の岡田さん(94歳)によると、昔は徳島側から上って行くのがメインで、登山口のある池田町佐野には、大きな料亭が3軒もあって、岡田さんが子どもの頃は、夕方になると三味線の音色が聞こえたそうだ。阿波の佐野は伊予街道の宿場町でもあったのだ。

▶前置きがいささか長くなったが、今朝は7時前に宿を出て、雲辺寺登山口からひたすら登った。高低差400mを1時間とちょっとで登りきると、尾根伝いの舗装道路にでる。ここまで休みながら登ったが、既に上半身はかなり汗をかいている。

▶ここは一応車が通れる道だが、車の影は全くない。やはりこのルートは車的には、裏街道なのだ。ただ、この道は歩きには快適だった。そして、宿を出てから2時間とちょっとで雲辺寺の山門に到着。ちなみに菅直人は2時間40分かかったそうだから(岡田さんの話)、私の場合、まあまあだったと言えるかな。f:id:Mitreya:20221014193943j:image
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雲辺寺は、五百羅漢像で有名だ。遍路道沿いにおびただしい羅漢像が並んでいるのは圧巻だが、像が新しいので興趣がやや落ちるのが玉に傷。ロープウェイ頂上駅近くがレジャーランド化しているのも、致し方ないところか。
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▶納経を終えて、9時20分に雲辺寺を後にする。その後は観音寺市街を目指して900m近くを一気に下っていくが、これが曲者で、長い下りは難所の一つだ。1時間半ほど急な山道を下って、やっと舗装道路に出たので、道端のベンチで早い昼食をとった。

▶67番大興寺には12時半すぎに到着。この寺が珍しいのは、大師堂が二つあること。一つはもちろん弘法大師を祀ってあるが、もう一つは伝教大師こと最澄を祀ってある。私の場合、菩提寺天台宗なので、四国に来て初めて最澄に出会い、大っぴらに般若心経を誦してやることができた。

▶この後、道沿いに「大喜多うどん」という店を見つけたので、躊躇なく飛びこんで「ぶっかけうどん」を注文。このうどんは、初日に高松駅ビルで食べたものとは別物の旨さだった。ローカル讃岐うどん、恐るべし。

▶夕方4時前に本日最後の68番神恵院と69番観音寺に到着。並べて書いたのは、この二つの寺は同じ山門の同じ境内にあるからだ。住職も一人で、納経所で御朱印は二つもらえる。効率がいいのは間違いないが、料金も倍取られました。


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▶午後4時半に宿に到着。今日は疲れました。