▶日本は治安が良い国として知られているが、最近はどうもそうではないらしい。先週は新聞の折り込みチラシの中に、最寄りの警察署からの注意喚起のチラシがはさまっていた。チラシは管内で起きた至近の犯罪状況を知らせる内容で、これを見る限り、さすがに殺人や強盗などの凶悪犯罪は見当たらなかったが、空き巣・窃盗・ひったくり・電話詐欺などが、私が住んでいるこの町でも継続して発生していることが良く分かり、驚く。
▶以前このブログにも書いたことがあるが、かくいう私も2年程前に松本清張の全集を古本で購入する際にネット詐欺に引っかかって、1万５千円程の被害にあったことがある。この時は一応警察には相談したが、結局は勉強代だと思って諦めざるを得なかった。
▶こうしたネット犯罪は、振り込め詐欺やフィッシング詐欺などに限ったことではない。最近ではSNSを通じて知り合った見ず知らずの人間が、徒党を組んで各地で連続して強盗事件を引き起こすような、ネットとリアルが融合した凶悪犯罪も発生している。まったく油断もスキもあったものではない。
▶警察も総力をあげてネット犯罪の対応にあたっているのだろうが、その効果たるや無いに等しい。ネットを開けば相変わらず現在もすぐ目の前にネット犯罪の闇が広がっている。理由はいろいろある。警察に膨大なネット犯罪（軽微なものから重大なものまで）に対応するだけの人的余力がないのはその通りだが、そもそも外国からのネット犯罪に対しては捜査権が及ばないので直接手をくだすことができないという事情がある。せいぜい相手国の警察に捜査要請をするのが精一杯の対応だが、相手国も同じ状況にあるので、実際は野放しの状況に近い。
▶現在私のパソコンのWebメールを開けると、そこに入ってくるのは99%ジャンクメールばかりである。そのメールの中には、国税庁、アマゾン、大手銀行、地方銀行、ヤマト運輸、クレジット会社などからの連絡メールが混じっているが、これらは全て詐欺メール（フィッシング詐欺）である。例えば国税庁からは税金の滞納督促、アマゾンからは第三者の不正使用に対するアカウント停止対応、銀行からは預金口座閉鎖の通知、ヤマト運輸は荷物の不在届などで、共通しているのはいずれも私からの返信を要求していることである。
▶これらのメールは極めて巧妙に作られているので、一見しただけでは正規のメールと判別しにくい。ただ、もともとアカウント停止などの重要情報がメールなどで届くことはなく、また最近はあまりの詐欺メールの多さに私の目も肥えてきているので、たちどころにそれが詐欺メールと分かるようになった。こんな状況は私だけではないハズだが、警察としても取り締まりようもなく、私達は、ただただ詐欺メールの洪水に悩まされるばかりである。仕方がないので、私はこのメールアドレスを放棄し、新たなメールアドレスに変えて対応した。このアドレスは公開していないので、今のところジャンクメールは殆ど入らない。
▶先日はこんなこともあった。夕食の時間に突然居間の固定電話が鳴った。電話に出るべきかどうか躊躇したが、思い切って受話器を取ってみると、道を挟んだ向かいの家の奥さんからの電話だった。私の家の玄関前に見慣れぬ白いセダンが長く停車していて、しばらく注意して見ていたら急に走り去ったという話だった。最近は自動車窃盗や空き巣などが流行っているので、心配になって念のため連絡してくれたのだという。
▶まったく親切でありがたい話なので、改めてその奥さんに感謝をして電話を切った。一応外に出て確認をしたが変わったところはないので家の中に戻ったが、そう言われてみると突然不安が襲ってくる。差し当たって盗られやすいのがクルマなのだが、俄かに防犯対策を講じるのは難しい。最近はアンテナを使って家の中に保管されているスマートキーと交信してクルマのロックを解除する盗難が多発していることを思い出し、スマートキーは金属製の缶に入れて保管することにした。
▶その晩は、ベッド横に護身用の手頃な棒を置いて、寝室にも鍵をかけて寝たが、気になっていたためか夜中に何度も目が覚めた。私は現金を家には置いていないし、泥棒が欲しがるような物品など家には皆無だと思っているので、従来から私のようなところに泥棒が入るはずはないと思っていたが、それは私の勝手な思い込みで、泥棒から見たら違うように映るのかも知れぬと改めて思い直した。要するに、防犯対策を講じるにしくはない。
▶先日、以前に勤めていた会社の皆さんと懇親する機会が東京であった。その時に挨拶を交わした一人暮らしの女性から、最近家に空き巣が入ったという驚くべき話を聞いた。警察が来て大変だったようだが、彼女はそれ以来不安で仕方がないと言う。さもありなん。
▶NHKでは毎夕、その日の振り込め詐欺や電話詐欺の状況を報道している。こんなことがいつから始まったのか知らないが、毎日続けざるを得ないほどに、現代日本の社会状況は不安定化しているということである。衆議院が解散して総選挙に突入したが、国防の話題は出ても現下の治安状況に言及する候補者はいない。情けない話だが、私たちはそういう時代に生きている。
