マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

尽きないネット詐欺の怖さ


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▶自らの恥をさらすようで気が引けるが、実は昨年11月にネット詐欺に引っかかってしまった。こうしてブログに載せるまでには私自身にもそれなりに心の葛藤があったが、私の経験が、多少なりとも読んでいただいた人の参考になるのではないかと思いなおし、こうして今ここに書いている。

▶経緯はこうだ。11月に四国遍路から戻ったあと、ネットで松本清張の全集(古書)を探していたところ、恰好の出物を見つけた。他の出品商品とも十分比較したうえ、本の状態が良さそうだったので購入を決意し、指定されたゆうちょ銀行口座に代金として1万2千円を振り込んだ。ところが現物は届かず、金は取り込まれたままの状態が現在まで続いている。既に、怪しい販売者のホームページは消え去り、連絡先となっていた電話番号は使われていないので、現在連絡は全くとれない状況となっている。

▶この怪しいホームページは、アマゾンや楽天やメルカリといった大手のものではなく、独立した業者のものだが、松本清張の全集だけでなく、多種多様の商品が掲載されていて、見てくれは一般的な通販用のホームページの体裁と変わらない。しかも、セキュリティに関するポリシーも書かれているなど、後から考えるとブラックジョークだ。ただ、その時僅かに異常を感じたのは、掲載されている商品内容にややいかがわしい感じがあることと(※いわゆる際物が多く、よく考えればこれらは全て撒き餌の類だ)、加えてそれらがほとんど例外なしにディスカウントされているということからも、冷静に判断すればフィッシング用のホームページであることは分かったはずである、と今では思う。

▶さて、購入に際しては、私のメルアドを登録する必要があり、フォームに記入して送信すると、早速購入御礼のメールと振り込み先口座の情報が届いた。5営業日以内に振り込みがなかった場合は、自動的に契約はキャンセルされますということが書かれているのも実にもっともらしい。さて、この段階で、私には再び疑念が沸いた。実は振込先のゆうちょ銀行口座の名義人がホームページの責任者名と異なっており、しかもベトナム人の名前(グエン・シ・ルイエン)になっているのだ。

▶ホームページは明らかに日本製に見えるにもかかわらず、振込先が何でベトナム人なのかと不審の思いが強まったが、なんと結果的には購入手続きを先に進めてしまった。疑念があったにも関わらず振込み手続きを完了してしまったことは、今となっては全く信じられない思いだが、よく考えるとそれは騙される人間の心理そのものだった。一番の心理的要因は、その松本清張の全集が欲しかったということに尽きるのだが、その裏には、古書の状態が非常に良いもので、こんな出物はめったにないという思い込み(※それが詐欺師の思うツボなのだが・・・)があったことは間違いない。加えて、仮に詐欺まがいの商法に引っかかってしまったとしても、1万2千円程度の損害なら、自分にとって諦めることができる範囲内の金額であるという驕った気持ちがあったのも否定できない。昔から「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と云うではないか、とね。

▶そのようにして、自らを納得させた上でおもむろにクリックして取引を完了させたのだが、それからものの5分も経たないうちに自分の心の中に疑念が急速に広がってゆき、すぐに「やられた!」と思ったのだから全く始末におえない。直ちに表示されている連絡先に電話を入れたが通じない。振込先は郵便局の口座だったが、七八八支店というだけでは俄かに所在地が分からない。そこで、支店名を詳細に調べたら鹿児島の郵便局だった。販売者の住所は兵庫県となっており、取引口座場所が鹿児島というのも辻褄が合わない。後悔先に立たず。あとの祭りとはこのことだ。1万2千円が煙となって消えた。

▶誰に相談することもなく(※このあたりも典型的な被害者心理だ)、この事案が発覚してから数日後に一応近くの交番に行って相談した。若い女性の警察官と中年の男性警察官が、親身になって話を聞いてはくれたが(※振り込み先の口座も明示している)、案件が詐欺なのか単なる民事上の債務不履行なのかその時点では判別できないので、残念ながら現段階では警察としては動けないということだった。念のため、消費生活センターに連絡してみてくれということなのだが、こちらも結論は見えていてお互いの時間の無駄だと思ったので相談することはやめた。それにしても、1万2千円という金額の設定が絶妙で、実際のところこの程度の金額だと大騒ぎしにくい。人間は、自らのバカさ加減をあまり大っぴらにはしたくないものだからだ。

▶それでも、ほとぼりが醒めた年末に、いつもの居酒屋で常連さんの一人にこの話をしたところ、この人も先日ネット購買で似たような経験をしたとの話を聞かされ、今度はこちらがビックリした。この人の場合、アマゾンのサイトにある個別業者のページに表示された腕時計を購入したところ、クリックしたとたんに「売り切れ」の表示が出たので、あわてて別の時計をクリックしたところ、こちらも「売り切れ」とのこと。結果的に4回売り切れの表示がでて、最後に欲しい時計が買えたのは良かったが、なんと翌日に似たような時計が別々の運送業者から5個も届いてしまったとのことだった。

▶販売業者に連絡したら、正当に取引が完了しているので、返品は受け付けられないという。仕方がないので、余った4個の時計を上野にある買取屋に持ち込んだら、1万1千円の新品の時計が、ナント1個千円の粗悪品だったとのこと。4個で4000円はかわいそうだから5000円にしておきますと言われたそうだが、実質的には5万円を超える大損害だったようだ。こちらも、限りなく詐欺に近い詐欺まがいの商法に引っかかったということで、本人もガックリしていたが、アマゾンを入り口にしているところが巧妙だ。

オレオレ詐欺振り込め詐欺は益々巧妙化して、毎日にように年寄りから多額の金銭を詐取しており、詐欺被害の件数は増えこそすれ減る気配はなく、詐欺犯と警察とのイタチごっこが続いている。最近は、これに加えてネット詐欺も爆発的に増加しており、テレビでも報道されていたが、実際のところ有効な対策が打てていないのが現実のようだ。

▶それが証拠に、私が引っかかったホームページによく似た通販ホームページが、現在でも堂々とネット上に店を開いている。もちろん、名前やページの体裁は異なっているが、商品内容やその陳列の仕方やディスカウントの表示が酷似しており、私には確信をもって同じフィッシング用のページであることが分かる。そのページには、宮尾登美子の全集(古書)が本人のサイン付色紙と一緒に販売されているのだが、宮尾登美子のファンの方が引っかからないよう願うばかりである。

▶大泥棒の石川五右衛門は、釜茹での刑で死ぬ間際に、「浜の真砂は尽きるとも、世に盗人の種は尽きまじ」と言って死んだとか。げに、悪人のはびこる世の中であることよ。皆さん、くれぐれもご用心なされ。