マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

読書と映画鑑賞の後の火事騒ぎ


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▶19日は、午前中に友人から借りていた弘中惇一郎「生涯弁護人(事件ファイルⅠ)」を読み上げた。弘中氏は、カルロス・ゴーンの主任弁護人となった弁護士で、テレビにもよく映っていたので顔を見れば思い出す人も多いだろう。私は、弘中氏のことは殆ど知らなかったが、ゴーンの弁護人を引き受けるくらいだから、その筋では名前の知れた弁護士だろうとは思っていた。ただ、公判中に被告人であるゴーンが海外逃亡(※しかも極めて計画的に)してしまったので、弘中氏自身に対しても、私としてもかなりうさん臭い印象をもってしまったことは否めない。

▶弘中氏は刑事専門の弁護士で、一般的には反体制派の弁護士としてよく知られている存在のようだ。これまで扱った代表的事件、例えば厚生労働省村木厚子事件、小沢一郎事件、鈴木宗男事件、カルロス・ゴーン事件、三浦和義ロス疑惑事件、東大全共闘事件、薬害エイズ事件・・・等々と、並べるだけでも相当なものだが、この本では、これらの事件に刑事弁護人として立ち会った時の心情や裏話、刑事弁護戦略や戦術、検察官や裁判所との虚々実々の駆け引きなどが、余すところなく語られている。

▶もちろんそれは弘中氏自身の見方であるとの限定つきだが、事件や裁判手続きについて目からウロコの部分も多く、読みだすと止まらない面白さだった。それにしても、私としては自らの無知を改めて自覚しなおしたが、ぬくぬくとした居間に座って本を開いて読むだけで、これだけの情報が手に入ってしまうのだから、あらためて読書というものの有難さを再確認した次第。わざわざ本を紹介してくれた友人に対しても、感謝に堪えない。

▶午後は、NHKBSで山田洋二監督「小さなおうち」を見る。戦前の裕福な家の中の出来事を描いた映画だったが、主演の松たか子の着物姿がやけに美しかった。山田監督の映画づくりにも、まっこと安定感がある。夕方、近くの生鮮市場で夕食用の買い物を済ませて家に戻ると、既に5時を回っていた。辺りにはまだ少し明るさが残っている。日没時刻も、12月初めの最も早い頃と比べると、30分くらいは遅くなってきているようだ。帰宅後、夕食前に風呂に入ろうかと思い、すぐに準備をした。

▶午後6時前、風呂の準備が整ったので、さあ入ろうと着ていた服を脱ぎかけていたら、遠くからサイレンの音が近づいてくる。その音はドンドン大きくなって、なんと家の前に車が止まった気配がする。ガラス窓越しに赤い光が点滅している。何の騒ぎかと脱ぎかけた服をまた身に着けて、急いで玄関の外に出てみると、目の前に消防車が止まっているではないか。消防隊員が、道路のマンホールを開ける間もなく、あっという間にホースをつないで、駆け出していく。すわ火事だと思ったが、どこが火事なのか分からない。そうこうしているうちに、近所の人がワラワラと家の外に出てきた。新たな消防車や救急車が次々と到着し、一帯は大騒ぎだ。
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▶あらためて火の粉や煙を探したが、我が家からは見ることはできない。しかし目の前に消防車が止まって消火活動に入ろうとしているのだから、出火場所が近いことは近いのだろうと思った。消火活動の邪魔になってはいけないと思いつつ、傍にいた消防隊員に出火場所を聞くと、向こうですと指をさす。向こうのどちらですかと聞き返すと、プライバシーの問題で名前は云えませんとの返事。よく訓練されているのか、杓子定規過ぎる対応なのか分からないが、文句を言っている場合ではないので、自分で確かめるべく、消防隊員が指さす方向に歩いていった。

▶火元は、我が家のあるブロックから北に二つ離れたブロックにある家だった。遠くから見るかぎり、大きな火や煙は見えなかったので、おそらくボヤのようだ。周囲の野次馬もそんなに多くなく、暗闇の中で、その家の中に向けて消防車のホースが何本かつながっているのが見えただけだったので、いずれにせよ、大ごとにはならないだろうと思い少し安心した。そのうち、周りに集まっていた人たちも、三々五々家の中に入っていったので、私も家の中に戻った。

▶さて、家に戻って、あらためて風呂に入ろうかと思ってみたものの、玄関前には依然として消防車が赤色灯を点滅させて止まっているし、そもそも近所で火事が続いているかも知れない時に、わざわざ風呂に入るというのもいさかか不用心だと思い、しばらく様子を見ることにする。しかし、いつまでたっても我が家の前の消防車は立ち去る気配がなかったので、着替えの下着と服をしっかりと準備して、思い切って風呂に入った。風呂の窓には、相変わらず赤色灯が点滅しているのが映っていたので、落ち着いた気分にはなれず、それでも30分は風呂に入っていたが、風呂から出ても消防車は相変わらず動かなかった。

▶結局、家の前の消防車が引き上げていったのは午後8時過ぎだった。結果は、やはり大したことはなかったようだ。しかし明日は大寒という冷え切った夜に、仕事とはいえ、この時間まで消火の確認やその他で遅くまで現場に残って任務を遂行している消防隊員の皆さんに、あらためて頭が下がる思いだった。こちらはそのお蔭で、風呂にも入り、夕食も心置きなく食べることができ(※もちろん酒も飲んだしね)、午前に続き、午後も感謝が堪えない一日だった。