マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

イタリア旅行を終えて

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▶3月15日の午後4時半過ぎに、JL408便で成田まで戻った。前日の昼過ぎにローマのフェミチノ空港からルフトハンザでフランクフルトまで飛んで、そこからJAL便に乗り継いだが、途中の乗り継ぎ時間も含めると、何だかんだで20時間近くかかった計算になる。とにかく、無事にJALに乗り込んだ時は、長かった2週間のあれこれを思い返し、正直ほっとした。機内でCAにウェルカムシャンペンをサーブしてもらったが、その旨かったこと。

▶今回のイタリア旅行は、3月2日に離日し、3日にローマに入って、14日にローマを発つ日程なのだが、途中8日から12日まではナポリに滞在するというやや変則的な行程をとった。その分移動や宿泊の手間が複雑化し、トータルでは若干費用や時間がかかったが、帰国時の乗り継ぎのトラブルを回避し、確実にJAL便に搭乗できることを優先した結果、敢えてこのような日程とした。結果的に列車の移動や飛行機の乗り継ぎは極めてスムーズで大きな問題は起こらず、それ以外にも、旅の最後に再びゆっくりとローマ市内観光をすることができたので、これは本当に良かった。

ナポリからローマに戻ったのは12日の昼頃で、その日はテルミ二駅近くの宿にチェックインしてから、市内北部にある広大なボルゲーゼ公園に向かった。ここには有名なボルゲーゼ美術館があり、カラヴァッジョの絵画やベルニーニの彫刻が必見なのだが、入場に予約が必須なことはバチカン美術館と同じで、あいにく私は予約は持っていない。しかし、とりあえず行ってみることにした。

▶この美術館は入場は2時間単位の時間制を取っていて、午後は1時、3時、5時が入場のタイミングとなっている。午後2時半にエントランスホールに行くと、でかでかと「当日のチケットは全て売り切れ」との張り紙がしてある。やはりそうだよね、と思いながら、それなら絵葉書でも買おうかと思い併設するショップに入った。ショップから出てきてふと見ると、「ラストミニッツ・チケット」と書いてある看板が立っていることに気が付いた。

▶この美術館は完全予約制が原則なのだが、聞けば、当日の混み具合で、時間と人数限定でフリーの客を入場させているようだ。この日は並んだ順に13人限定で、ラストミニッツとあるように、通常2時間の見学時間が大幅に制限され、今日は僅か45分しかないが、それでも良ければ並んでくださいとのこと。列の長さを見たら数人が並んでいるだけなので、迷わず並んだ。なお料金は、割引などなく正規の13ユーロだった。

▶午後3時から辛抱強く並んで入場を待つ間、予約券を持つ人達が次々に入場していく。こちらは45分と鑑賞時間が限定されているので、全部を回ることは初めから諦めて、絶対見るべきと言われる作品を幾つかネットで調べる。午後4時近くになって、やっと入場の許可が出た。これなら1時間は鑑賞する時間が取れそうなので、目当ての作品があるところまですっ飛んで行った。入場制限がかかっているので、館内は思ったより空いている。

▶真っ先に向かったのは「プロセルピーナの略奪」。これは17世紀初めのベルニーニ作の大理石彫刻で、冥界の王プルートウが、豊穣の女神の娘プロセルピーナに一目ぼれして、これを略奪しようとするギリシャ神話を題材にしており、神様だから許される訳ではないだろうが、とにかく二人の絡み合いが真に迫り、とてもこれが大理石から削り出された代物とは思えない出来栄えである。
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▶ベルニーニはイタリアのあちこちに多くの彫刻を残しているが、特に有名なのはこの彫刻と言われている。写真で見てのとおり、とにかく肉体の質感が生々しい。この作品だけで15分近く見ていたが、彫刻の出来栄えというならバチカンミケランジェロ作のピエタ像に匹敵するものだ。しかし、ピエタが聖マリアとキリストを題材にするなら、こちらはギリシャの神様とは言え、男と女を題材にした極めて人間臭いもので、精神性の深さというようなものは、ピエタには到底及ばぬように見えるのだが、さてどうだろう。

▶次に見たのは同じくベルニーニ作の「ダビデ像」。こちらは古代イスラエル王のダビデが巨人ゴリアテに向かって投石器で石を投げる瞬間を表したもので、旧約聖書を題材にしている。躍動する瞬間を見事に捉えているが、「プロセルピーナの略奪」のような生々しさには欠ける。彫刻も何を題材にするかで、印象が随分と変わるものだ。同じくベルニーニの「アポロとダフネ」もバロック彫刻の傑作とされ、こちらも時間をかけて見た。この像は土産物屋の絵葉書でも売れ行きが良さそうだが、やはり「プロセルピーナの略奪」にはかなわない。
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▶この他に、カラヴァッジョの絵画が何点かあり、こちらは光と影の描き方が独特で、いずれもバロック絵画を代表するものと言われているようだが、彫刻の鑑賞に時間をかけてしまったので、それほどじっくり見る時間が無かったのは残念であった。しかし、もともとそのつもりだったので、午後5時近くになって最後にもう一度「プロセルピーナの略奪」に戻って、この彫刻に挨拶してから美術館を退出した。ラストミニッツ・チケットを購入できたのは本当にラッキーであったと、今でもそう思う。

▶翌日はローマ観光の最終日。朝一番で昨日のボルゲーゼ公園に散歩がてら行ってから、スペイン広場、トレビの泉、トラヤヌスの記念柱、ヴェネツィア広場、フォロ・ロマーノコロッセオを見ながら歩いた。何だか随分前に見たような気分だが、トラヤヌスの記念柱を除き、いずれも数日前に見たもので、もう一度この目に焼き付けておこうと思いながら歩いた。
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そこからアウレリウスの城壁に沿って更に歩き、ローマを代表するサン・ジョバンニ・ラテラノ大聖堂、サンタクローチェ・イン・ジェルサレンメ教会(※舌を噛みそう)、サンタ・マリア・マジョーレ大聖堂を立て続けに見学し、軽くピザでランチを取ってから、最後にテルミニ駅近くのローマ国立博物館に行った。

▶ローマ国立博物館で見たのは主に二つで、一つはローマ初代皇帝アウグストゥス像で、こちらは世界史の教科書では有名なもの。幸いなことに部屋には私以外誰もいなかったので、セルフタイマーを使って写真を撮った。もう一つの見どころは、彼の后であったリビアの居間に描かれていたフレスコ画。こちらは2千年の時を隔てて良くもこの色彩が残っていたものだと感心する。二つとも、今回の旅行の掉尾を飾るに相応しいもので、極めて感銘深いものであった。参考の為に、以下に写真を載せておく。
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▶15日の午後7時前には無事家に戻ったが、私の家にある全てのものが、私に「おかえりなさい」と挨拶してくれている気分だった。それにしても、人生の一つの区切りともなる、よい旅であった。