マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

ナポリにやって来た!


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▶8日は、列車でナポリに行く。午前11時15分にローマのテルミニ駅を出て、12時半にナポリ中央駅に到着した。利用したのはイタリア新幹線で、ローマ・ナポリ間を1時間と少しで移動出来るのでいたって便利である。ちょうど昼時なのでテルミニ駅で旨そうなピザを買い込んで車中で食べるつもりでいたが、周囲を見たら誰も仲間がいないのはやや意外。少し恥ずかしかったが、買ってしまったものは食べなければならない。

ナポリはローマから南東に220km程の位置にあり、古くは独立した都市国家だったが、ローマの台頭であっさり征服された。ただローマの支配下に入ったのは結果的に良かったようで、その後のナポリの繁栄はローマによってもたらされたと云われる。イタリアは火山国なので日本と同様に地震が多く、私の滞在中にも小さな地震があったが、大きな被害が起こるとローマ皇帝は陣頭指揮で復旧に務めたと記録に残る。立派なものである。

▶「ナポリを見てから死ね」と言うことわざがあるので、期待してナポリ中央駅に降りた立ったが、期待はいささか外れた。天候が良くなかったこともあるが、駅前の広場には多くの外国人がたむろしており、ローマの印象とはだいぶ異なる。イタリアもアフリカからの不法移民問題を抱えると聞くが、昨今のナポリの状況は、あるいはそう言った事情を反映しているのかも知れない。
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▶宿舎にしたのは駅前のアパート・ホテルで、部屋に入るまでに4度も鍵の架かった扉を開ける程に安全面では徹底していた。内部は広くとても清潔で、滞在の為の設備が全て整っていて申し分ない。しかしトイレがシャワールームを挟んで男性用と女性用に別れているのは、どういう意味だろうか。

▶天気予報をみると、翌日以降は不順な天候が続くので、午後はまずはフォロ・ロマーノで失くした傘の代わりを探しに街を歩いた。ナポリには日本のコンビニのような店はなく、そもそもどんな店が傘を扱っているのか分からない。何店かそれらしき店先を覗いては諦めかけた矢先に、観光客用の土産物屋の奥の目立たない場所に傘を見つけた時は正直ホッとした。話は飛ぶが、翌日雨が降り出したとたんに、街角のあちこちに黒人の傘売りが湧き出るように現れたのには思わず笑ってしまった。需要があれば供給もあるものだ。

▶傘を買ったその日は晴れたり曇ったりの天気だったが、散歩がてらナポリ湾まで行ってみる。最初に見えて来たのがヌオボー城という古城で、何となくナポリに来た感じがしてくる。そしてナポリ湾が見渡せる海岸に出たら俄然視界が広がった。ナポリ湾を隔てて彼方に大きな山が見えるが 、もしかしてと思ったらそれがベスビオ山であった。
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▶ベスビオ山は標高はそれほど高く感じないが、長い裾野の右側が海岸線まで届いているように見えて山と海が見事につながっている。その姿が何となく故郷の赤城山を彷彿させるのが懐かしい。知っての通りこの山は有史以来幾度も噴火を繰り返しているが、最も有名なのは今から2千年近く前に起こった西暦79年の大噴火である。

▶この時は、麓にあった古代都市ポンペイの全市域が一夜にしてベスビオ山から噴出した火山灰の下に埋まるという悲劇が起きた。そのポンペイには明日行く予定であるが、雨の予報なので既に1日延期することにしている。しかしこうしてナポリ湾越しにベスビオ山を眺めていると、否が応でも期待は高まって来る。しかし雨でなければいいが・・・。海風が冷たく、少し寒くなってきたので宿舎に戻った。

▶と言う訳で翌日は雨になった。傘をさしてナポリの国立考古学博物館に行く。誰でも考えることだが、雨の日の観光は屋内がいい。よって雨の日にもかかわらず多くの観光客が博物館に押寄せた。この博物館には多くの古代ギリシャ・ローマの彫刻が展示されているが、ローマ時代の彫刻の多くは遺跡から掘り出したもので、しかも殆ど例外なくギリシャ彫刻の模刻である。
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▶模刻はすなわちコピーなのだが、当時のローマ人が如何にギリシャ美術を愛していたのかが良く分かる。一方、オリジナルのギリシャ彫刻は、現在失われてしまったものが多く、そう言う意味では今日こうしてギリシャ彫刻を鑑賞出来るのは、多くはローマ人のお陰と言っていいだろう。塩野七生が言う通り、ローマ人は良いものなら自分達の文化に躊躇なく取り入れた。その度量の大きさこそがローマ帝国が長続きした理由の一つだ。

▶なお、考古学博物館ではポンペイ遺跡から発掘してきた貴重な品々や壁画も収蔵しており、その一部を展示しているが、やはり現地に行ってからこの展示を見た方が記憶に残る。確かに貴重な壁画ではあるが、それ自身が美術品と云うものではないので、壁画に感動するというものではなかった。もっとも私自身の想像力が欠けているが所以の話かもしれぬが。
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▶考古学博物館を出ても相変わらず雨が降っていて、外歩きにもいい加減嫌気がさしてきた。時間は早かったが観光は切り上げて宿舎に戻ることにする。地下鉄でナポリ中央駅まで戻ったら午後2時前だったがまだ昼食を食べていなかったので、駅前の食堂に飛び込んで、ワインとスパゲティーで軽く昼食を取った。
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▶部屋に戻ると冷蔵庫の中にビールがあったので、こちらもついでといった感じで飲んだら疲れと眠気がどっと出て、そのままベッドにもぐって寝てしまった。明日はポンペイだが、さすがにこの時間に寝たら夜中に目が覚めるから、ポンペイ行きの準備はその時にすればいいと思いつつ。