マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

ローマの休日が始まった

▶3月3日からローマに来ている。前回ローマに来たのは遥か昔の46年前に遡るが、その時は新婚旅行でパリ経由だった。当時のヨーロッパへの新婚旅行というのは私達の世代ではまだかなり少なかったが、幸いなことに妻が航空会社勤務だったので、社員が結婚する場合は夫婦で往復の航空券が妻の会社から支給された。当時はまだそういう幸せな時代だった。

▶今回はフランクフルトまでJALで飛んで空港近くのホテルに一泊し、翌朝ルフトハンザでローマのフィミチノ国際空港に降り立った。日曜の午前9時だった。そこから荷物のトラブルなど色々あって、レオナルド・エクスプレスでローマ市内のテルミニ(終着)駅に着いたのが午前11時。列車が到着する少し前に、車窓から2000年前の古代ローマの城壁の遺跡が見えてくるのだが、こんな街は世界広しと言えどもここだけだろう。

▶テルミニ駅と言うのは悪名高い独裁者のムッソリーニが作らせた駅で、終着駅なので線路が1番線から24番線まで櫛の歯のようにずらりと並んでいるのが極めてヨーロッパ的だ。私が最も好きな映画の一つである「ひまわり」では、ソフィア・ローレンが夫であるマルチェロ・マストロヤンニを駅で見送るラストシーンが泣けるので有名だが、こちらは残念ながらミラノ中央駅のようで、そう言えばテルミニ駅とは風景が少し異なった。

▶駅に到着してまず気をつけるのがスリ対策で、ガイドブックには事例が豊富に掲載されている。更に親しい友人からはスリや置き引きに注意しろとかなり具体的な注意を受けた。前回の新婚旅行の際は、この駅に降りてすぐに妻が数人の子ども達に囲まれ、一人が妻のバッグに手を突っ込んだ事件があった。今回はそんなことはなかったが、正直言って気が抜けない。ただ準備は万全にしてきているつもりだ。

▶今回のイタリア旅行は、ローマに5泊した後ナポリに移動して4泊し、そこからまたローマに戻って2泊してからフランクフルト経由で帰国すると言うやや複雑な日程となっており、その点が昨年のパリとは異なっている。最初の宿泊が市内中心部のナヴォーナ広場近くのアパートメント・ホテルで、場所や広さや設備や価格も申し分なく、事前にネットで色々調べて行ったが、現地に行って探すもそれらしきホテルが全く見つからない。

▶途方に暮れていると、若い男が近づいてきて私の名前を突然口に出したのでびっくり仰天、それがホテルのスタッフだった。実はその場所がアパートの入口なのだが、看板の類が全くないので、普通の感覚では絶対見つからない。下に写真を貼っているが、そもそもそこは普通のアパートなのだ。パリのホテルもアパート形式ではあったが7階建てのビルで、当然看板もエントランスや受付けもホテル同様にあったから、てっきり同じようなものだと思っていたが、予想は見事にはずれた。

▶スタッフに案内された部屋は、200年以上前の石造りアパートの一室を改造して新しくホテルに仕立てあげたもので、内部は一人使いとしては十分に広く快適そうで、テーブルには山盛りの果物とワインが準備してある。もちろんWiFiもすぐに繋がり、キッチンには料理やグラス類が全て揃っているので、ローマ市内で長期滞在するにはもってこいだが、完全に自立した熟練旅行者でないと、使いこなすのは無理だろう。

▶スタッフが常駐していないので、鍵の受け渡しやチェックアウトの方法が特殊過ぎて、もしこれが始めから分かっていたら、さすがに私もここを選ぶことはなかったかも知れない。しかし、出来合いのパック旅行では絶対に味わうことのできない経験がここではできそうだ。要するに、ここでは私は旅人ではなくローマの住人の一部になっているのだ。

▶窓を開けると直ぐ目の前に隣の建物の壁が見えるが、驚くことにそれは古代ローマの遺構の壁をそのまま利用したものだと教えてもらった。ここでは、2000年前の過去と現在が見事に共存している。ちなみに現在私は真夜中に目を覚ましてベッドの中でYouTube と備え付けのサウンドシステムで音楽を聞きながらこのブログを書いているが、外からは降り出した雨の音が僅かに聞こえるだけで、なんだか知らない世界に来ている感覚だ。

▶さて、アパートの扉を開けるとそこはもうローマの中心部で、数十メートル先の角を曲がればカフェやレストランが並んでいて、地元の人や観光客が食事をしながら談笑している。昨晩は到着したばかりでさすがに疲れていたが、ここのレストランでシュリンプのサラダとカルボナーラとワインで早めの夕食とした。しかし量が多すぎて食べ切れなかった。

▶昨日は日曜だったので、アパート近くのベルニーニの噴水で有名なナヴォーナ広場は観光客が目白押しの状態だった。そこから数分のパンテオン神殿も入場規制されているほど混雑していたので入場は諦めた。なにせ、パンテオン古代ローマのコンクリート建造物が、完全な形で現存している唯一の建物なのでバチカン同様に絶対にはずせないのだが、楽しみは明日以降にとっておくことにした。

▶たまたま月始めの日曜のため国立美術館や博物館の入場料は全てフリーだったので、近くにあるアルテンブス宮国立博物館に入ったが、とにかく写実的なギリシャ・ローマ彫刻の凄さには圧倒された。その後千数百年経ってから、ミケランジェロなどによって更に素晴らしい彫刻が出現することになるのだが、それもまた明日以降の楽しみではある。