マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

帰国時のドタバタ騒ぎ(1)


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▶月曜の晩にパリから帰国した。翌日は多少の時差ボケが残ったものの体調は概ね良好で、夕方には報告も兼ねていつもの居酒屋に出かけて行くと、「おかえりなさい」とスタッフの皆さんが温かく迎えてくれた。実に日本に帰ってきた気分だった。しばらくすると、馴染みのK氏もやってきたので、これ幸いと私のパリからの帰国時のドタバタ話を聞いてもらったところ、大いに盛り上がったが、本当のところ、大変でした。

▶帰国当日の朝は午前6時に目が覚めたので、ベッドの中で昨日の美術館巡りのことなどを思い出しながらブログを書く。最近は良くも悪くもこのブログを書くことが完全に仕事のようになっている。一応書き上げるともう9時を過ぎていたので、急ぎ荷物をまとめてチェックアウトの支度を始め、午前9時半過ぎにホテルを出た。シンプルなアパートメントホテルだったが、設備もコスパもまずまずのホテルで満足できる滞在だった。一週間本当にお世話になりました‼️

▶さて、本日の帰国便は夜の7時に出発なので、それまで時間はたっぷりある。もともと帰国当日の日曜日の過ごし方は、日本にいる時から考えていた。とりあえず空港に向かうターミナル駅であるパリ北駅まで行き、そこで荷物をロッカーに預けて、ルーブル近くのオープンしているカフェで、ブランチでもゆっくり食べようかと考えていた。その後はその時考えようとういスタンスである。

▶ホテルを出て最寄り駅から5分でパリ・サン・ラザール駅に到着。そこから接続しているRER(近郊快速)E線でパリ北駅まで行こうと地下道を歩いていると、前方に看板が立っていて道を塞いでいる。フランス語なので内容が分からないが、6月11日の日曜日(11,Dimanche,Juin)という表記だけは何とか読める。すると後ろから来た女性が看板を見るや引き返していくので、要するにE線(サン・ラザール駅と北駅間)がストップしていると分かった。

▶北駅にはバスでも行けるのでバス停まで行ったが、どのバスが北駅に行くのかが分からない。しばらく待っていたが動きがないので、遠回りでも地下鉄で行くことにした。サン・ラザールから北駅に地下鉄で行くのは、新橋から東京駅まで地下鉄で行くようなもので、路線図を見ると二駅ほど乗り換えが必要だ。地下鉄の乗り換えの場合、階段が多い(新しい駅はエスカレータもある)ので、荷物を持っての乗り換えは大変だが、とにかく行くしかない。

▶結局30分近く費やしてようやく北駅に到着した。ロッカーはすぐ見つかったが、その前にシャルル・ドゴール空港行のRER(B線)の列車の運行状況だけでも確認しておこうと発着ホームに向かう。ホームが空港行であることを確認してから電光掲示板を見るが、空港行の表示が全く出ていない。午前中の運転間隔が開いているのかと思ったがそんなことがある訳がない。不思議なので、立っていた駅員らしき人に空港に行きたいのだがと訪ねると、今日は列車では行けないとの返事。驚いてどうしたらいいのかと聞くと、分かり憎い英語で、とにかく何処どこまで行ってからバスに乗れとしか教えてくれない。それ以上は埒が明かないので、私もギブアップ寸前。

▶そう言えば、先週の日曜も空港からパリ市内に向かうRER(B線)列車が運休だった。しかし、まさか空港行の列車が日曜のたびに運休するなどと考えもつかない。先週空港に到着した時は、結局ロワシーバス(専用シャトルバス)でパリ市内のオペラ座前まで来たので、今回もオペラ座からバスで空港に行くしかないと思い、再び地下鉄を乗り継いで、オペラ座に到着した。ここまでで更に30分。要するに1時間かけてサン・ラザール駅からオペラ座まで荷物を持って移動したことになるが、普段なら少し時間はかかるが歩いてでも行ける距離だ。初めからバスで行けばよかったか・・・。

オペラ座前の道路は不思議に空いていた。ようやくロワシーバスの発着場に到着すると、数人の観光客が掲示を見ている。なんだか不吉な予感が走る。読めない掲示を見ていると、傍にいたタクシー運転手を名乗る男が、今日はバスはストップしているとのたまう。思わず「何故だ」と聞き返すと、私はバス会社ではないのでストップの理由は知らない、必要なら掲示板の電話番号に連絡してみてくれと言う。

▶周りの観光客も騒いでいる。理由はよく分からないが、マラソンの影響?らしい。そんなバカなと思うもののその場で確かめる術がない。傍にいた20代の女性が、英語で私に状況を聞くので、分かっていることだけを話すと彼女も呆れ顔だ。タクシー運転手を名乗る男は白タクの運転手で、ここを稼ぎ所と思い、一人30€で空港まで連れていくと周囲の人に声をかけている。ちなみに、正規タクシーは空港まで58€(右岸なら53€)の定額制だ。

▶今度はフランス語を話す若い女性がそばに来た。彼女も空港に向かう予定らしく、さっきの20代の女性と話している。そこに60代と思しき明るい茶色のスーツを着こなした小柄な紳士がやってきた。白タクシーの運転手が声をかけるも、ふざけるなといった態で話に取り合わない。そのうち、その紳士が自分はタクシーで行くがだれか一緒に行くかと周囲に声をかけ始めた。

▶私は即座にOKと返事をして、傍の二人の女性にあなたちもどうかと声をかけると、それなら一緒に行きますとの返事。すると、最初の若い女性が、私がスマホで近くのタクシーを呼びますと手際よくスマホで操作し始めた。彼女に頼るしかないと悟った紳士も一応同意するも、近くで探した方が早いとかなりイラついている様子だ。ようやく10分後にタクシーの居場所?が確定したので、そこまで歩くことさらに数分。くだんの紳士も遅れながら荷物を引いてついてくる。

▶待っていた車は、どう見ても普通のタクシーには見えないが、しかし違法な白タクシーでもなさそうだ。女性達がテキパキと運転手と話をして全員の荷物をトランクに詰め込み4人で乗り込んだ。助手席にはくだんの紳士が座り、一番奥の席に私が座った。空港まで約50分、狭い車内で肩寄せ合いながら会話をする。女性の一人が紳士にどちらまでと聞くとバルセロナだとの返事。今度は紳士が振り向いて君たちはと聞くので、若い女性がロンドン、次のフランス語を話す女性はイスタンブールと答える。私は東京と応えた。東京は遠い、何時間かかるかと聞かれるので、12時間かそこらでしょうと言うと、そんなことはない、自分は先週ソウルから戻ったところだが、14時間はかかったと言う。行きと帰りはジェット気流が違うので時間も違うのだと言おうと思ったが、ああそうですねと答える。このあたりは私も日本人だ。しかし実際は13時間半もかかったが。

▶その後の会話で分かったことだが、紳士はスペイン人ではなくベネズエラ人の大学教授でバルセロナ在住。国際政治が専門とのことだが、英語は私と同様うまくない。英語の上手なロンドンに行く女性はイギリス人だとばかり思っていたが、ロシア人だった。ロシアのどこだと聞くとサイベリヤだというので、私には一瞬分からなかったが、シベリヤのことだった。シベリヤは寒くて大変かと聞くと、夏はパリと同じだという。しかし冬はマイナス25度くらいだというと、皆がそれでは生きていけないと笑う。車内の空気がなごんできた。

▶私の隣に座ったもう一人の女性はトルコ人。高校の時にフランス語のハイスクールに通っていて、その後は大学で修士号まで取ったインテリ女性だった。紳士が、トルコの大統領選挙の話を始めた。エルドアンはだめだと言うとトルコ女性も同意するが、英語で紳士をやりこめている。紳士は、エルドアンは金持ちと貧乏人が支持していると言い、金持ちはビジネスの利益をもらい、貧乏人はバラまいた金をエルドアンから直接もらっているというとまた皆で笑った。

▶こんどはロシア人女性が、エルドアンよりプーチンの方がヒドイという。憲法を勝手に変えて死ぬまで大統領に居座れるなんて信じられないと言う。こちらの女性もなかなかインテリだった。両親と一緒にあちこちの国に住んでいたようで、現在はロンドン在住。列車でロンドンに行くよりLCCの方が安いので空港に行くのだとか。私も身の上話をしようかと思ったが、残念ながら英語力が追い付かないので、黙って聞いていた。

▶四方山話をしながらようやく空港に到着した。支払いはロシア人女性が一括で済ませたが53€だった。彼女が13.25€だが一人13€でいいというと、紳士は13€をキッチリ払ってさよならと言って別れていった。私は20€札しかなかったので、5€バックでいいよと言って彼女から5€もらった。トルコ女性は小銭がなかったので空港内で両替してから払うと言っていた。トラブルが続出したが、思いもよらぬ道中を経験させてもらい、大変楽しい時間を過ごして、こうして空港に到着した。私は、Thank you, and have a nice trip!と言って気持ちよく彼女等と別れたが、私の場合、その後はまだナイスではない状況が続く。ちなみにタクシーは、どうやらウーバー・タクシーとかいうものだったようだ。(以下、続く)