マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

令和5年のパリ一人旅(5)


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▶ここのところテレビを全く見ていないので、世の中の動きから完全に切り離されている。ネットにはこうして繋がっているものの、どういう訳かYahoo関連のアプリが使えない。だから大谷翔平がホームランを打ったか、巨人が負けたか、藤井聡太が勝ったかをすぐ知ることができない。知ってどうなるわけでもないので、情報が少ないというのも、慣れれば案外居心地がいい。

▶6月のパリの気候は本当に過ごしやすい。こちらに来てから5日目になるが、晴天が続いている。湿度が低いので、夜に下着を洗濯すると朝には完全に乾く。日中は28度くらいまで気温が上がるが、木陰に入れば涼しい。服装は半袖シャツ一枚で十分なのだが、朝晩は意外と気温が低いので、パリジャンもしっかり上着を着て通勤している。

▶朝いつものカフェでコーヒーとオレンジジュースとクロワッサンで朝食を済ませて、電車に乗る。こう書くと何だか仕事に行くイメージだが、今日の目的はオルセー美術館。メトロの乗り方にも慣れてきたし、時間の余裕もあったので、一駅前のコンコルド広場でメトロを降りてから、セーヌ川沿いを散歩がてらにオルセーに向かう。

▶朝からジョギングしている人や、自転車で通勤する人が結構多い。昼間のセーヌ川には観光船が行き交うが、その船はまだ両岸に繋がれたまま、静かに出番を待っている。後ろにはエッフェル塔、左手前方にはルーブル美術館が見える。午前8時半、歩くこと15分でオルセー美術館に到着。

オルセー美術館は、パリを代表する美術館の一つだが、開館したのは1986年と意外に最近で、古い駅舎を改造した建物がとてもユニークである(※冒頭の写真はオルセー美術館の内部。昔駅であったことが分かる)。ルーブルが、古代からルネサンス期を経て18世紀くらいまでの西欧世界の絵画や彫刻を広範囲に展示するキング・オブ・キングだとすれば、オルセーは、19世紀のフランス印象派の絵画が中心で、現在に知られる多くの画家が現れたフランス絵画の奇跡の時代を象徴する美術館だと言える。ゴッホゴーギャン、マネ、ドガ、モネ、ルノワールセザンヌなど有名な画家がメジロ押しだ。

▶9時に開館と勘違いしていたが、待つこと約1時間、9時半に開館するとドッと人が入って行く。オルセーは駅舎を改造した3層構造だが、地上階を0階、2階を1階と呼ぶのはフランス方式で、その上は駅舎ならではの広大な空間が広がり、最上階は5階と呼んでいる。私が見たい印象派の作品は、ほとんどが5階に集中しているので、何はともあれ5階に直行。

▶ほとんどの人は下から順に見て行くだろうとの予測は見事に当たって、5階にはまだ全くと言っていい程人影が見えない。最も見たかったルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会」の所にまずは行く。f:id:Mitreya:20230610051141j:image
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とにかく静かな時間に見たいものをじっくり見るというのが私の流儀で、続いてモネの「左を向いた日傘を差した女」を見る。
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▶いずれも印象派を代表する絵画だが、どちらも、光と影の描写が斬新で、そこに流れる時間までもが感じられるのが凄い。やはり見るべきものは本物である。モネの日傘を差した女の絵は二枚組となっていて、その二枚の絵の隣には、亡くなったモネの妻のデスマスクを描いた絵が展示されている。日傘の女はモネの傑作とされているが、彼はそれ以後に人物画を描くことは一切なくなった。私はこの絵に自分の記憶を重ねることができる。
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▶モネの後は再度ルノワールを見てから、隣の部屋のゴッホを見る。その頃には下から上がって来た中学生くらいの集団で展示室はにわかに騒がしくなる。やはり早く見ておいて良かった。お目当てはゴッホの「星降る夜」。画面全体が濃いブルーの色調で占められている中、黄色で描かれた星がまるで降るようだ。
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近くで見ると、ゴッホの筆の使い方が克明に分かるので、そこにゴッホの息遣いを感じ取ることができる。これも良かった。f:id:Mitreya:20230610131612j:image
印象派を一通り見ると10時半なので、館内のカフェでコーヒーを飲みながら休憩する。次は地上階に特別展示されているマネとドガだ。この二人は極めて近い関係で、何だかゴッホゴーギャンの関係に似ている。芸術家の関係というのは、やはり常人のものとは違うようだ。マネは「草上の昼食」や「オランピア」を描いて当時の画壇から袋叩きにあう。一方、ドガはマネのことを深く尊敬していたようだ。その辺りは、今回知った。

▶オルセーの絵画は印象派だけではないが、今回ゴッホの絵の一部とフェルメールの絵がアムステルダム美術館に貸し出されて見られなかったのは残念だった。どちらもオランダ人だから、絵が一時的に里帰りしたようなものかも知れない。少し遅い昼食を、やはり館内のレストランで食べた後、再び5階に行ってルノワールとモネの絵にサヨナラを言ってオルセーを出た。

▶時刻は既に3時を回ってしまった。次にセーヌ川の対岸にあるオランジュリー美術館に寄る。こちらはモネの巨大な睡蓮の絵が有名だが、疲れの影響もあって、早々に引き上げることにした。まあ、オルセーと比較すると大分見劣りがしてしまう。そして最後はモンマルトルまで足を伸ばしてサクレ・クール寺院と絵描きが集まる広場に行った。
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▶夕方近かったが、モンマルトルは若い人たちでごった返していた。モンマルトルには今回が三度目で、最初は45年前の新婚旅行で、この時は下手な日本人の絵描きの絵を1万円で買った。二度目は8年前だったが、この時は妻をモデルに絵を描いてもらったが、出来映えはもう一つ。そして今回は、みやげの絵はがきのようなものを買っただけだった。
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サクレ・クール寺院の横を降りる坂の途中にギネスが経営するカフェがあり、ここに前回立ち寄ってビールを飲んだことを思い出したので(※この時は妻と妻の友人と私の3人だった)、ここで再びビールを飲んでからホテルまで戻った。ホテルの窓からは先ほどのサクレ・クール寺院が、夕陽に輝いているのがいつまでも見えた。