マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

尾瀬・至仏山を登ってきました・・・


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群馬県で生まれて育ったにもかかわらず、長いこと私は尾瀬に一度も行ったことがなかった。ある時、妻から「群馬は良い所がたくさんあるのに、実家に帰るばかりで、他の所に連れていってもらったことがない、例えば、あんな有名な尾瀬にも行ったことがない」とクレームを言われた。全くその通りで、反論のしようもなかったが、それでも尾瀬に行く機会は長いことなかった。

▶初めて尾瀬に行ったのは、2012年の8月のことで、この時は夏休みの前半を娘夫婦と初孫を連れて万座温泉でトレッキングを楽しんだ後、引き続き夫婦二人で尾瀬に行った。尾瀬へは、鳩待峠から直接尾瀬ヶ原(山の鼻)に下りる初級コースではなく、アヤメ平を経由してから尾瀬ヶ原(竜宮)に下りる中級コースを採ったが、これは結果的に大正解だった。アヤメ平から初めて見る燧ケ岳の雄姿は、まことに素晴らしい。さらに、振り返ったときに後方に聳える至仏山雄大さも、甲乙つけがたい景色だ。この段階で、妻も私も尾瀬のとりこになった。そして、尾瀬ヶ原に下りてからは元湯山荘に二泊して、翌日は尾瀬沼まで足を伸ばしたのだから、最初にしては妻も私もよく歩いた。

▶次に尾瀬に行ったのは2016年10月上旬で、この時は天気に恵まれなかったので山の鼻の尾瀬ロッジに一泊して尾瀬ヶ原を散策するだけだったが、見事な草紅葉が我々を迎えてくれて、二度目ではあったが、これが妻と行った最後の尾瀬となった。

▶妻の一周忌が済んだ昨年10月の初旬、私は突然一人で尾瀬に行く気になった。実は、この時は私の体調は心身とも万全というには遠い状況だったが、妻の写真を胸に入れて、やや無理をして鳩待峠⇒アヤメ平⇒竜宮⇒山の鼻⇒鳩待峠のコースを辿った。天気は良くて、山の紅葉と尾瀬ヶ原の草紅葉が盛りで、やはり無理をして来てよかったと思ったものだった。

▶そして今回は初めての尾瀬登山。自らの体力を考えて、往復約6時間の鳩待峠から至仏山を往復するコースを慎重に選んだ。大事なのは日程で、これまた天気を最優先することにして、天気予報をにらみながら一週間前に空いていた戸倉のロッジを予約した。20日は連休の最終日だったが、毎日が日曜の私にとっては関係がない。朝早く車で家を出て、途中で前橋の実家の彼岸の墓参りを済ませ、そのまま沼田から尾瀬に向かった。宿に着いたのは午後3時半だった。

▶翌朝7時半に宿から乗り合いタクシーで鳩待峠まで行き、8時過ぎに至仏山登山口に置いてある登山カードを念のため記入して登山道に入った。天気は快晴で、前後を歩く人はいない。緩い樹林帯の坂道を少しづつ高度を上げていく。歩きだして20分もすると薄っすら汗をかいてきた。しばらく歩くと木の階段が現れて上りがきつくなる。いつも散歩で40分歩いているが、上りが前提の登山と散歩ではさすがに勝手が違う。後ろから熊よけの鈴の音が近づいてきた。見ると年齢は私とそんなに変わらなそうな男性だが、ここで無理をするとロクなことがないと分かっているので、気持ちよく道をゆずって先に行ってもらう。

▶一時間近く歩くと南が開けた稜線に出た。快晴なので遠くの山並みがくっきりと見える。よく見れば遠くに富士山が見えるではないか。しばらく脚を止めて景色を眺めていたが、腰を下ろすような場所がないので、再び歩き出す。途中、小さな湿原を横切ったが、ここは鹿よけの柵が湿原を囲んで設置してあり、木道は柵に設置された扉を開けて通過する仕組みになっている。ここの湿原は既に草紅葉となっていた。結局、休み休み歩きながら1時間半ほど登ってやっと笠ヶ岳至仏山の分岐点を過ぎた。地図を見ると、なんだかんだで標準タイムでここまで上ってきたことを確認し、少しほっとした。そこからしばらく登ると、突然開けたところに出た。前方にこれから目指す小至仏山の頂が見え、東側が大きく開けて、尾瀬ヶ原が一望に見渡せる。木道の脇にテラスが設置されてあったので、ここでリュックを下ろして大休止することにした。
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▶このテラスには先ほど私を追い抜いていった男性が既に休んでいた。「まだ先が長いですか」と私が挨拶すると、「小至仏山のピークまで30分、それから少し下って、至仏山まで上り返すのが30分くらい」と言っていた。彼はその後すぐ出発したが、私は15分ほどここで尾瀬ヶ原の景色を楽しんだ。
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▶テラスを出ると、すぐ急登となり、休んだばかりなのに息が上がってくる。大きな岩石の間を縫うようにしてホウホウの態で2162メートルの小至仏山の頂上に着いたが、岩だらけで座るところもないような所に石柱が一本立っている。テラスからここまで30分強、ここまで来てやっと前方にゴールの至仏山の頂上が見えてきた。しかし、そこまではかなりの距離を降りて、また登り返さないといけない。尾根伝いの道で眺めはいいのだが、足元の状況から目が離せない状況が続き、とても景色を楽しむ余裕がない。前方の上りには先行する人達が登っていくのがよく見える。

▶その後、あえぎあえぎ頂上直下の岩石帯の細い登山道を両手と両足を使って登ってゆき、とうとう標高2228メートルの至仏山の頂上に到達した。時刻は午前11時10分、鳩待峠から約3時間と少しで登頂したことになる。標準コースタイムよりは若干時間はかかったが、途中アクシデントも無かったので、上出来である。
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▶頂上には既に数名の男女が休んでいて、しばらくすると、反対側の山の鼻登山口から上ってきた人達が次々に登頂してきた。空に雲はほとんどない快晴の状況で、周囲360度が山岳景観である。東には尾瀬ヶ原と燧ケ岳、東南方面には日光白根山男体山、西に目を転じると谷川岳が大きく見えて、手前の下方に大きなダム湖が見える。利根川上流の奈良俣ダムのようだ。

▶ここで宿から持参した昼食のおにぎりを食べて30分近く休んだが、山頂で食べるおにぎりって、何でこんなに旨いんでしょうね。見ると、私の眼前の岩にカラスが一羽止まっている。人に慣れて、おにぎりの分け前が欲しそうな顔をしてるが、2228メートルの山頂に、餌が欲しくて飛んでくるカラスがいるのか、不思議なものである。
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▶正午少し前に頂上を後にして下山を始めた。下りは上りとは異なる危険があるので、とにかく慎重には慎重を重ねて降りることにする。岩稜を一度降りて、また小至仏山まで登り返し、その後はひたすら下っていった。テラスまで降りてきて、ヤレヤレとリュックを降ろして一息入れた。ここまで約1時間かかった。

▶その後は、順調に下ってゆき、途中でヘロヘロのおじさんを追い抜いたが、この人は足に豆が出来て痛いと泣き言を言っていた。降りてくるに従って、次第に私にも膝の痛みが出てきたが、なんとか午後2時過ぎには鳩待峠まで降りてくることができた。降りるとすぐ乗り合いタクシーの運転手が待っていたので、峠の待合所で登山の余韻に浸る暇もなく、とにかく戸倉までタクシーで戻ることにしたが、全く効率的な山行となった。
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▶戸倉の駐車場まで昨晩泊まった宿の主人に迎えに来てもらい、宿まで戻ってから風呂に入れてもらった。ゆっくり風呂に浸かっていると、風呂場の正面に今日私が上った至仏山のタイル画が描いてあり、ここにきて私はやっと登山終了の余韻に浸ることができた。

▶午後3時過ぎに宿の主人に礼を言って車で尾瀬・戸倉を後にした。その後は、ひたすら車を運転して千葉まで帰ったが、高速道路の渋滞もほとんどなく、家に着いたのが午後7時20分だった。とにかく、事故もなく、無事に家に戻れたことを仏壇の妻に感謝ともども報告し、二日間の日程を終えた。登山後の250㎞におよぶ車の運転も終わり、しかも帰ってからも、夕食の支度に身体が動いたので、まだまだ自分も若いではないかと気が付いた次第。それにしても、よく考えると「至仏山」とは仏に至る山、誰が名付けたか知らないが、よくこの山を選んで登ったものと、我ながら感心することしきりだ。