マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

5年の歳月が流れ


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▶8月末に西日本を襲ったノロノロ台風10号は、交通機関に甚大な影響を与えるなど、まったくもって大迷惑の限りだったが、その台風は迷走したあげく、9月1日の正午ごろに静岡付近で熱帯低気圧に変わり、その後は北陸あたりで消滅してしまった。大騒ぎをした割には締まりのない最後を迎えた台風ではあったが、それにしても私に限らず散々な目にあった旅行客も多かったに違いない。農業被害がそれほど大きくなかったことは、不幸中の幸いであった。

▶台風が去って9月を迎えた。少しは涼しくなるかと期待したが、先週は相変わらず残暑が続いた。4日は妻の祥月命日だったので、朝一番で市営霊園まで墓参りに行ってきた。墓回りの草取りを済ませてから、妻が好きだった生花を供え、線香を手向けてやったが、早朝にもかかわらずこの程度の作業でじんわりと汗が沸いてくるのだから、やはり夏はまだ終わっていないようだ。

▶あれから5年という歳月が流れた。この5年の間に、新型コロナのパンデミックが地球全体を覆い、全世界では500万人以上の人が亡くなり、志村けん岡江久美子も亡くなった。オリンピックが2度も開催され、トランプがアメリカ大統領に就任したがバイデンに敗れ、突然ロシアがウクライナに侵攻し、安倍晋三が凶弾に倒れた。日本では首相が2度変わり、AIが普及し、将棋の藤井聡汰が八冠を制覇した。

▶私は1年半をかけて一人で四国の遍路道を歩いた他、パリを訪れ、ローマとナポリも旅した。新しい仕事を始め、孫は2人増えて7人となり、友人が増え、クルマも買い替えた。以上のことは妻は全く預かり知らないことである。写真を眺めると、妻は相変わらず当時のままであるが、5年の間に私の頭髪は薄くなり、微妙に体形も変わって自分が老境に入ったことを実感する。そして私の心が癒されるにつれて、妻は次第に過去の人になっていった。残念で哀しいことではあるが、それが5年という歳月の実態である。
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▶ところで、4日の晩に妻の友人の一人から電話をもらった。この人は妻の命日を忘れずに、毎年この時期になると決まって電話をくれる。5年たっても妻のことを悼んでくれる人がいるということは、感謝をしてもしきれないが、きっと妻はまだその人の心の中では生きているということなのだろう。その女性からは「ご主人の元気なお声が聴けてよかった」と言われたので、「こちらこそ〇〇さんの声を聴いて改めて元気がでました」と言って電話を切った。

▶昨日は本千葉カントリーでゴルフを楽しんだあと、いつもの居酒屋に出かけていった。たまたま常連さんが勢ぞろいしたので、既に卒寿を超えた最年長のT氏の快気祝いを名目に酒を飲んだ。T氏のことはこのブログにも何度か書いているが、8月末に突然右半身の神経が麻痺したので、すぐに病院にゆき脳梗塞であることが判明。その場でただちに入院となったが、僅か4時間ほどで回復したので程なく退院し、その後もまったく後遺症がないというのだから、年齢を考えるとラッキーを超えて驚異的である。

▶そのT氏は、この日はさすがに好きなタバコは控えていたものの、酒の方はいつもと変わらぬ飲みっぷりで(※まあ、誰も止める者はいなかったですが・・・)、私自身の身の上話や、日本製鉄のUSスチールの買収騒動の行方といった「硬派」の話題をさかなにして、遅くまで飲んだ。

▶家に戻ったのは11時近かったが、いつもと異なり不思議とすぐには寝る気にならない。そこで普段の生活では絶対と言っていいほど考えないことなのだが、仏壇の下に大切にしまっておいた数通の若い頃の妻の手紙(※前橋の実家を整理している際に偶然発見したもの)を引っ張り出して、酔った頭で読み始めたのだが、これがいけなかった。読み進むにつれて感情が高ぶり、不覚にも涙が込み上げてきて止まらなくなった。

▶なぜ手紙を引っ張りだしたのか今になってもよく分からない。5年経って既に過去の人になったはずの妻ではあったが、昨夜は久しぶりに昔の感覚が蘇ってきて、こんなことならおそらく夢にでも現れるのではないかと期待してベッドに入ったが、それはかなわなかった。