マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

四国遍路日記(7ー4)

▶四国遍路も残り少なくなってきた。今日は84番屋島寺、85番八栗寺、86番志度寺を回る予定だ。朝7時に屋島の麓にある宿を出て、すぐに屋島寺に通じる遍路道に入った。歩き出して10分も経たないうちに急登になった。屋島はその名の通り、かつては海に浮かぶ屋形船のような形をした島だったからだ。
f:id:Mitreya:20230308204145j:image

▶地図を詳細に見ると、現在も相引川という細い川によって四国本土から僅かに切り離されているのだが、現地で実際に確認するのは困難だから、一般には島とは思われていないようだ。周囲が江戸時代の頃から埋め立てられてしまっており、かつて島だった面影は全くない。その屋島は台形状の頂上付近に屋島寺が開かれていて、ここを中心として今は観光地化されている。しかし、屋島が有名なのは、何と言っても源平の屋島・壇之浦の合戦がこの地で行われたからだ。

▶さて屋島寺を目指して上る遍路道は急ではあるが、登山路としても使われているので、極めて良く整備されている。私が喘ぎながら上って行くと、既に頂上まで行って降りてきた多くの地元の人たちとすれ違った。彼らの雰囲気では毎日登っているのではないかと思われるほどだ。私の場合、上り始めて1時間ほどで屋島寺の仁王門に着いた。
f:id:Mitreya:20230308204234j:image
f:id:Mitreya:20230308204314j:image

▶84番屋島寺は、仁王門から直線上のかなり先に本堂が見える立派な寺である。真っ直ぐに本堂に向かって歩くと、左手に宝物館とおぼしき現代的な建物が見える。総じて良く整えられた寺であることが分かる。広い境内には人影はまばらだ。本堂と大師堂で納経を済ませてから、納経所で御朱印をいただくのだが、私の納経帳の残りも少なくなってきている。

▶10分ほど休んでから屋島寺の裏に出て、そのまま真っ直ぐに屋島の東側に出る。すると、突き当たりが展望台になっていて、そこから下に見えるのがお待ちかねの源平の壇之浦の合戦場だ。昔はこの下は海になっていて屋島側が壇之浦と呼ばれていたとか。海を隔てて前には八栗島が見えるので、下の海は島に挟まれた海峡のようなものであったのかも知れない。しかし現代の壇之浦は陸地となっているので、よほど想像をたくましくしないと当時の状況は把握できないだろう。
f:id:Mitreya:20230308204405j:image

▶展望台から少し南に向かって歩くと85番八栗寺に続く遍路道の入り口がある。この道は屋島の東側を昔の壇之浦に向かって真っ直ぐに降りて行く道で、いやはやかなりの急勾配だ。道は荒れていて、西側の上りの遍路道と比べると、天と地ほどの差がある。転倒しないようにとご丁寧な注意書があちこちぶら下がっているが、本当にここまできて転倒したら、心配してくれている家族や友人たちにも申し訳が立たないので、一歩一歩慎重に降りて行った。

▶降りて行った所には、平家に担がれて幼くして海に沈んで亡くなった安徳天皇を祀る小さな社があるのだが、驚くことに、ここに今上天皇(当時は浩宮徳仁皇太子)が参詣した記念碑が建っている。こんなところに現在の天皇陛下が来られていることを知り、皇室の長いつながりを改めて知る思いがした。まあ、安徳天皇は幼児だったので子どもはいないのですが・・・。
f:id:Mitreya:20230308204445j:image

▶そこから少し行った先に洲崎寺というのがあり、この寺に源義経を守る為に自らの身を挺して亡くなった家来の佐藤継信の墓がある。ここは源平の合戦をコンパクトに纏めた掲示板が寺の塀にかかっていて面白かったので、しばし小休止。寺の庭が、屋島と壇之浦を模した造りになっているのが何ともユニークだ。面白いので、以下に写真を載せておく。
f:id:Mitreya:20230308204106j:image

▶洲崎寺から八栗寺に向かって遍路道を上って行く。八栗寺は、屋島の対岸?に聳える八栗島の頂上近くにある。ここもそれなりにきつい上りだが、途中に草餅を売る店があり、年配の女性が座っている。看板を見たらナント映画「男がつらいよ」のロケ地だった。平成5年12月に封切られた第46作「寅次郎の縁談」は瀬戸内海の琴島が舞台で、マドンナは二度目の松坂慶子。映画の一部がここ八栗で撮影されたのだ。店主のおばさんはその時の目撃者で、山田洋次監督や渥美清のことを熱く語ってくれた。遍路をしているといろんな出会いがあるものです。
f:id:Mitreya:20230308204513j:image

▶85番八栗寺は珍しい歓喜天を祀る寺だが、それ以上の印象は薄い。そこからひたすら道を下り、次の86番志度寺を目指した。時刻はちょうど12時で、このまま歩くと2時には志度寺に着くが、寺近くの本日の宿のチェックインは4時と言われているので時間が余ってしまう。途中の道の駅で昼食をとりながら対策を考えた。

▶地図をにらみながらあれこれ検討して、志度寺を終わったら、その足で次の長尾寺の途中まで歩いて電車で戻ってくることにする。志度寺に着いたのは午後2時。そこからJR造田駅まで歩き、15時31分の電車で志度駅まで戻った。疲れたが、これで最終日の明日の予定が楽になるのはありがたい。宿にチェックインしたのは4時少し前だった。夜は近くの地元の居酒屋で酒を飲んだが、ここでの話しが面白かった。

▶この宿からも近い86番志度寺については書きたいことが沢山あるが、それについては別に書きたい。
f:id:Mitreya:20230308204550j:image