マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

四国遍路日記(7ー2)

▶昨晩は80番国分寺近くの「えびすや旅館」に宿泊。こちらは昨年10月に次いで2度目なので、宿のおかみさんが私の顔を覚えていてくれた。同宿したのは色白の草食系大学生が一人だけで、彼は1番霊山寺を2月の初旬に出発して真冬の四国を通しで回っているとか。見かけによらず根性ありそう。それでも朝食を取りながら私が話しかけると、律儀にも食べているご飯茶碗を下に置いて聞いてくれる。まったくこちらが恐縮してしまう。

▶宿を出たのが6時50分で、私が一足早く出発した。今朝も快晴だが、太陽が昇ったばかりの気温はまだまだ低く(5℃くらいか)、ダウンジャケットを着込む。手先も冷たいので手袋が必要だ。向かうは81番白峯寺で、宿を出ると道はすぐに上りになり、あとは6.5㎞の山道をひたすら登る。30分も上ると勾配がきつくなり、このころから汗がじんわりと出てくる。ダウンジャケットを脱いでリュックにしまっていたら、赤いダウンの上に白い笈摺を重ね着し菅笠を被った女性とおぼしき若い遍路が追いついてきた。よく見たら同宿した大学生だった。彼は「お先に失礼します」と言って私を追い抜いて行った。

▶1時間程勾配のきつい山道を登りつめると、山上を走る平坦な道路に出る。ここまで来れば一息つける。左手に広がる自衛隊の演習場を見ながら車の通らない静かな早朝の道路を歩くのだが、風は少し冷たいものの太陽が暖かく、足の運びも軽くなって至福の時間だった。そこから再び遍路道に入ってしばらく歩いて9時過ぎに81番白峯寺に到着。


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白峯寺は山門をくぐった正面に納経所があるので、最初は質素な山寺の印象だったが、参道を左に折れた正面に頓證寺殿という別の伽藍があり、さらに右手の急な石段を上った先が白峯寺の本堂と大師堂なので、全体として見るとかなり立派な寺である。そこで今年最初の参詣を済ませて石段を下りてきたら、改めて右手に頓證寺殿が見えてきた。看板を見ると頓證寺殿とは崇徳上皇の御霊殿だった。

 

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崇徳上皇は、後白河天皇保元の乱(1156年)を戦い、敗れて隠岐島に流される。その後四国讃岐に転流されて、1164年失意のうちにこの地で亡くなった。その崇徳上皇の御陵が頓證寺殿の裏にある。坂出の79番天皇寺も確か崇徳上皇の御霊を鎮める為の寺だったが、当時の人達は、よほど崇徳上皇の怨霊が怖かったようだ。昔読んだ上田秋成の「雨月物語」には、西行法師が崇徳上皇の墓前で御霊を慰める話が出てくる。その時西行の前に崇徳上皇の亡霊が現れるのだが、その場所こそまさにここ白峯寺なのだ。雨月物語の怪談も「白峯」と題されている。

▶9時半に白峯寺を出て82番根香寺に向かう。歩いたのは根香寺道と呼ばれる旧遍路道で、この道沿いには一丁(109m)毎に丁石という目印の標石が立っていた。昔の遍路はこの丁石を頼りに歩いたと言われている。
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根香寺道の途中の道端のベンチの上に、ジュースやお菓子を入れたボックスが置いてあり、臨時接待所の張り紙があった。誰かがお接待の為に置いてくれているようだ。疲れている身には本当にありがたい接待だ。せっかくなので、缶コーヒーを1本いただく。
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10時半に82番根香寺の山門に到着。ここで30分程休憩を取った。

根香寺を11時に出て先ほど来た道を戻る。ここで道が二股に別れている。道標を見ると左が83番一宮寺とある。少し不安に思ったのだが、道標にしたがって下って行った。5分程下ってから来た道と少し景色が違うのではないかと思いだし立ち止まって考えてみたが、地図を見てもよくわからない。不審な思いを抱きつつさらに行くと旧江戸一宮寺道の看板を見つけた。

▶この道は確かに83番一宮寺に通じているようだ。しかしもしかしたら遠回りの道ではないかと思い、ここに来て分岐点まで戻ることを決断。早足で10分強歩いて分岐点まで戻った。結果は道標とは逆の右手の道が正解だった。ここまでに既に25分のロスは痛いが、まだ午前中のことゆえ気を取り直して下って行った。遍路ではこういうことはよくある。

▶12時40分に途中の予讃線鬼無駅前に到着。やれやれと思いつつ、朝宿のおかみさんに教えてもらった駅前のパン屋のカフェでランチを取ることにする。田舎のカフェかと思ったが、ここは良かった。聞いてきただけのことはある。13時過ぎにカフェをあとにして、グーグルナビを使って一宮寺まで歩いた。市街地ではこのナビはとても便利です。


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▶14時半に本日最後の83番一宮寺に到着。特徴のない寺だった。そこから5分の所にある本日の宿「きらら温泉」に15時過ぎに到着。ここはスーパー銭湯に宿舎が併設されているので、チェックインしたらすぐに温泉に飛び込んだのでした。