マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

四国遍路日記(4ー1)


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(岩本寺の本堂にて)
▶宿坊の朝は早い。岩本寺の宿泊者は午前6時から始まる「お務め」に参加することが決まりになっている。今朝の参加者は、車遍路の夫婦者と、私を含めた歩き遍路が4人の計6人だった。少し遅れて住職が登場し、すぐに勤行が始まった。勤行そのものは30分で終わったが、その後の法話が10分以上あり、早く出発したい歩き遍路の皆さんは、若干ヤキモキしたようだ。

▶朝食の開始が遅れたのと、雨支度に手間取たのとで、宿を出たのは7時40分だった。本降りというほどではないが、四国地方には梅雨のはしりの前線がかかっており、朝から雨が降っている。長い道中で雨の日があるのも仕方ないことだろうと自らに言い聞かせながら国道56号線四万十町から四万十市方面に向けて歩く。(なお、地名の混乱は既にこのブログでも報告した通りである。)

▶1時間ほど歩いてから56号線を離れて本格的な遍路道(山道)に入った。ここは片坂峠というところで、名前の通り一方的な下りの道だ。実はこの道を選択するについては、かなり考えた。前回最終日に登りの山道で転倒しているので、雨の日の下りには更に注意が必要と分かっているからだ。転倒は絶対にできない。しかし、午前中で体力に余力があり、しかも時間に余裕を持たせることができるので、雨中の峠道をトライしてみることにした。

▶誰も通りそうにない雨の山道を、転ばぬように、30分近くかけて一歩一歩足下を確かめながら降りてきたが、市野瀬で再び56号線に合流した時には正直ホッとした。気がつけばレインウェアの下にかなりの汗をかいている。(ゴアテックスなのに仕方ないですね。)

▶既にかなりの時間歩き続けているので休憩をとりたいが、何せ雨が降っているので、腰を下ろす場所が見つからない。市野瀬集落を過ぎたところの道沿いで遍路休憩所の看板を掲げてある民家を見つけたが、雨なので戸口は閉まっている。そのまま通り過ぎると、後方から呼び止める声が聞こえた。

▶その家の人が、私の姿を見つけてわざわざ声をかけてくれたのだ。軒先に雨囲いが施してあってベンチもあるので、ここで休ませてもらうことにした。ケースに飲み物が並べてあり、お好きなものをどうぞというので、遠慮なく野菜ジュースを頂戴したが、本当にありがたいですよね・・。そのおじさんに、お礼に私の納経札を一枚渡したら、こちらもありがたく受け取ってくれた。これは接待を受けた時の遍路の作法である。

▶そのおじさんとひとしきり話したあと、重ねて礼を言って再び雨の中を歩きだしたが、何だか体だけでなく心も軽くなったように感じたものである。その後は延々と56号線を歩き続けて、正午をかなり過ぎたところで、土佐佐賀の手前にある「道の駅なぶら土佐佐賀」で昼食をとったが、その頃には雨も上がってきた。ここまでで既に20㎞は歩いたことになる。


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▶雨は上がったものの、午後になると疲労が足にくるのがわかる。そこからは太平洋の荒波を左に見ながら海岸沿いの道を8㎞ほど歩いた。今晩の宿である民宿たかはま・・ここは海に面していて、部屋からの眺めは高級ホテル並みだ・・に到着したのは3時半だった。雨で疲れたが、ほぼ予定通りだった。