マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

医療崩壊とリーダーシップのあり方


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▶オリンピックとお盆が終われば、コロナ感染者数も落ち着いてくるのではないかと勝手に思っていたが、そうはならなかったようだ。昨日の感染者数の発表は、全国で2万3918人というから、一ヶ月前と比べると驚くような数字になっている。これには無症状の感染者のかなりの部分が検査漏れで抜けていることを考慮すれば、実際の感染者の数はこれより2~3割増しと考えた方がよさそうだ。

▶この影響で、中等症にもかかわらず入院措置を受けられずに自宅療養を余儀なくされる人が増加しており、残念なことにその中で死者も出ているというから、言うところの「医療崩壊」が始まっていることは間違いなさそうだ。これらを受けて、各自治体の首長は、口を開けば「災害級の状態」だと危機感をあおるが、本当にそのような認識があるなら、もっと「非常事態」に応じたリーダーシップの発揮があってしかるべきと思うのは、私のみではないはずだ。

▶昨日千葉では、妊娠後期の感染者の妊婦が状態が悪化して出血しているにも関わらず、受け入れ先が見つからず、結果的に自宅で出産したものの、赤ん坊は助からなかったという悲劇が起こった。どこか受け入れてくれる産婦人科医療機関はなかったのだろうか。一般的にコロナ対応の医療資源が枯渇しているということは理解できるものの、この話は、中等症のコロナ患者の受け入れ先がないという話とは、次元が異なる話のように思えてならない。

▶1995年3月20日午前8時過ぎ、オウム真理教による地下鉄サリン事件が起こった。この時、築地の聖路加国際病院日野原重明医師(理事長)は、当日手術予定で既に麻酔がかかっている人以外の全ての手術をただちに中止し、同時に外来治療も全て中止する決断を行った。この間わずか1~2時間。直後からなんと640人のサリン中毒患者(※この時点では、原因が不明だった)を受け入れて、トリアージ(※患者の選択)を行った。

聖路加国際病院の一階の受付スペースやチャペルは、さながら臨時の野戦病院のような様相を呈した。その上で、111人を正式入院させ治療にあたった。非常事態における日野原医師のこのような決断がなかったら、東京消防庁は640人のサリンに苦しむ人々の受け入れ先探しに、どれほど困ったことになったかは想像に難くない。ちなみに、聖路加国際病院では、日野原医師の指示で、病院設計段階から、非常事態に備えて、チャペルの壁を含めいたるところに、酸素吸入装置などの必要設備を設置してあったというから、恐れいる。なお、日野原氏は、2017年に105歳で天寿を全うされた。

▶さて、現在の事態が非常事態であって、まさに「災害級」の事態だと認識するのなら、政府を含め、全ての自治体の首長は、日野原医師が示したようなリーダシップを発揮しなければならない。飲食業に対する酒の供給停止のお願いや、不要不急の外出を控えるようお願いするといった、結果に対して自らの責任を問われないような弥縫策では、災害級の非常事態には全く用をなさない。まだやることが沢山あるだろう。

▶但し、断っておくが、私は現在の状況が「災害級」の「非常事態」にあるとは必ずしも思っていない。現在言われている「医療崩壊」の真の原因は、コロナ感染者の数の多さではなく、提供される「コロナ病床数」の少なさと偏りにあると思うからだ。全国に88万床もあると言われる病床で、コロナに活用されているのは3万4000床で、理由は色々あるのだろうが(※端的に言えば沢山ある中小民間病院はコロナ患者を受け入れていない)、結果として全体の僅か4%にしかならない。我が国ではインフルエンザが流行するとおよそ1000万人が感染し、年間3000人が亡くなるが、これが「医療崩壊」に繋がらないのは、全国88万床の病床が活用できるからだ。従って現在「医療崩壊」起こしているとしたら、その原因はコロナ感染者数の増加にあるのではなく、コロナ病床を確保できない政府の医療行政の誤りにあるのだ。

▶ところで、何か明るいニュースはないものかと思っていたら、今朝のNHKラジオで、昨年はコロナ影響で先進国の平均寿命は軒並み1~2歳下がったが、日本の平均寿命は下がらなかったとの報道があった。理由は、簡単に言えば例年より死者数が減少したからだという。この話を裏付けるようなレポートが、3月に国立感染症研究所から出ている。感染研では、昨年11月までの令和2年の超過死亡数と過少死亡数の分析をレポートにして発表しているが、これによると、令和2年の超過死亡数はコロナにも関わらず例年並みで、この結果は「新型コロナ対策等による正(プラス)の影響の評価に役立ちます」と感染研ならではの、やや曖昧な控え目なコメントになっている。超過死亡数の計算ロジックは難しいのでこの場での説明は省くが、要するにコロナ死者数はそれほど日本全体の死亡の動向に影響は与えていないということのようだ。

▶別の数字をあげてみよう。日本の新型コロナ感染症での死者数は、これまでの累計で1万5000人を超えた。一方我が国では毎年130万人が亡くなっており、その中には2万人の自殺者を含んでいる。昨日の日本の死亡率(死者数30人÷感染者数23918人)は0.1%だった。また、1918年~20年のスペイン風邪の流行時に、日本での死者数は45万人であった・・・云々。

▶最後はとりとめのない話となったが、政府や自治体の無策を嘆きつつも、まあ、あまり心配し過ぎるのもどうかなと言うことか・・・私は既に2回ワクチンを打ったし。誰かが言っていた「悲観は気分であり、楽観は意志である」と。