マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

ゲームを分けた数ミリメートル


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▶ここ2~3年、日本のスポーツ界で驚くべき偉業が続いている。松山英樹がマスターズを制したのを皮切りに、大谷翔平が二刀流でメジャーリーグのMVPをとり、そして今度はサッカーの日本代表の優勝候補ドイツ・スペインの撃破である。日本の若者たちは、ここにきて突然のように世界の超一流の仲間入りを果たし始めた。理由はよく分からないが、これが驚かずにいられようか。

▶スペイン戦のあった2日は、夜中の2時過ぎに目が覚めてしまった。午前4時からのキックオフのことは知っていたが、テレビ観戦するために目を覚ましたのではない。目が覚めたのは純粋に年齢のなせるわざである。日本がワールド・カップEグループの初戦にドイツに2-1で逆転勝ちしたのは、文句なしに賞賛に価する偉業だった。しかし、その後のコスタリカ戦を与えずもがなの失点で失ってしまったのをみて、次のスペイン戦にかける期待は大きくしぼんでしまった。

コスタリカは初戦でスペインに7-0で負けているのだ。そのコスタリカに負けた日本が、スペイン相手に、いくら強がってみても所詮は無理だろうと殆どの日本人はそう思っていたに違いない。私もその一人だったわけだが、目が覚めてしまったので午前3時半に階下に降りていってテレビをつけた。

▶午前4時にキックオフ。案の定というか、試合が始まっても日本の選手は、まともにボールに触らせてもらえない状態が続く。前半11分、右サイドからフワッとあがったボールに中央にいたスペインのモラタがフリーで頭を合わせてあっさり先制。あまりにもあっさり点をとられてしまった感じがあって、唖然とするばかり。その後もスペインが一方的にゲームを支配した感じで、にわかサッカーファンとしては、前半が終わったときにはテレビを消して、もう一寝入りしようかと思うほどだった。これでは、決勝トーナメントに進めるわけがない・・・。

▶しかし、後半が始まって3分、台所で朝食のための米を研ぎながらテレビを見ていたとき、突然大きな歓声があがる。交代要員でピッチに立った堂安が、ペナルティエリア手前から、左足で放った強烈なミドルシュートが、キーパーの手に僅かに触れたあと、ゴールに吸い込まれたのだ。同点だ。おいおい、これは真剣に応援しないといけないぞと思い始めたのが、いかにもにわかサッカーファンに相応しい。

▶するとさらに3分後、今度は堂安が右からセンタリングしたボールが、キーパーの前を斜めに抜けて反対側ゴールラインに切れかかる。と同時に、三苫が飛び込んで左足で折り返したボールは、きわどくゴール前に浮き上がり、それを飛び込んだ田中が脚で合わせてゴール。沸き起こる歓声。しかし、私にはボールは一瞬ゴールラインを割ったかに見えた。テレビの画像からは、ボールと白線の間に緑の芝生がわずかに見えた、ような気がした。当然、この判定はビデオ・アシスタント・レフェリーに委ねられた。

▶緊張した時間が流れる。結果は、ゴール。三苫選手の折り返しは、ゴールラインを割っていなかったのだ。日本にとっては逆転のゴールで、このあとは40分以上も日本が守り抜いて、2-1でスペインに劇的な逆転勝利となった。日本は勝ち点6で、一位通過。スペインとドイツは勝ち点4で並んだが、得失点差でスペインの2位通過が決まった。もし、あのゴールが決まってなかったら、スペインと引き分けた日本は、得失点差でドイツに負けて、決勝トーナメントに進出できなかったことになる。

▶しかし、スペインに逆転勝ちしたゴールは、私には無効ゴールに見えた。テレビを見ていた多くの人にもそう見えたに違いない。多少後味が悪い気がするが、最新のビデオ判定なのだから、判定は正しいのだろう、と思うことにした。その朝は、日本中が歴史的偉業に沸いた。それはそうだろう。Eグループのドイツとスペインを逆転で撃破できるなどと、だれが予想しただろうか。ただ、テレビは問題のシーンについてのコメントは慎重に避けた。少なくとも私にはそう感じられた。

▶しかし、一日経って三苫の折り返しの写真が出た。ゴールラインを真上から映している映像で、写真には、ゴールラインに接しているボールに三苫の足がかかっていることがはっきりと映っている。ボールの接地面は確かにラインから離れていたようだが、真上から見ると、ボールはラインと重なっているのだ。ルール上は、ボールはラインを割っていなかった。なあんだ、早く言ってくれよ、と思ったのは私だけではないだろう。後ろめたい気分は、この写真によって解消された。まさに、ゲームを分けた数ミリメートルだ。
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▶さて、ラインとボールとの関係でいうと、ゴルフのOBの扱いがある。もしこのケースがサッカーではなくてゴルフだったら、ボールはOBかインボールか。正解は、OB。先日ヒマにまかせてYou Tubeでゴルフルールの解説を見ているとき知った。ゴルフの場合、OBの領域を白線または白杭で示している。したがって、白線はOB領域にある。厳密な境界線は白線のコース側だ。

▶それなら、白線にボールが僅かにでもかかっていたらOBかというと、それがそうではない。白線にボールがかかっていても、その一部でもボールがコース内に残っていれば、そのボールはセーフとなる。つまりボールが白線の内側(コース側)を完全に越えた場合がOBとなる訳だ。三苫選手のケースでは、ボールは白線の外側に接しているのでOBだ。ややこしいのは、ハザードの領域を示す赤線の場合、ボールが僅かにでも赤線に触れていれば、それはハザード内に入ったボールとみなされる。この場合はOBとは逆のあつかいなので注意が必要だ。

▶細かい話になったが、それはそれでいい。とにかく、日本はスペインに堂々と逆転勝ちした。これで決勝トーナメントが一段と面白くなってきた。