マイトレーヤの部屋から

徒然なるままに、気楽な「男おひとりさま」の日常を綴っています。

東京医科歯科大学に行く


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▶年齢が嵩むと身体のあちこちにガタがくるのは仕方のないことで、いくら強がりを言っても、寄る年波には勝てない。この原則は歯においても当てはまる。とは言え、口の健康は身体全体の健康に大きな影響があると言われるので、私も以前から日本橋の歯科クリニックに2~3ヶ月に一度は顔を出して、定期検診のかたわら歯のクリーニングを行っている。ところが昨年は四国遍路に行った後に、原因不明の歯痛に悩まされた。

▶痛みが出たのは左上の歯列なのだが、レントゲンを撮ってみても異常は見つからず、そもそもどの部位の歯が痛むのかさえ不思議と確定できなかったため、お世話になっているR先生からは「しばらく様子を見ましょう」と言われる始末。おそらく歩き遍路で溜まった疲れが免疫低下につながって歯痛を引き起こしたのではないか(※年を取るとこういう現象はよくある)との説明に納得して、しばらく我慢していたらそのうち痛みは消えていった。昨年11月のことである。

▶年が明けたある日、歯磨きを終えて何気なく左上の歯茎をチェックしていたら、歯茎の一部に白い斑点のようなものを見つけた。こんなものが歯茎にできるのは初めてのことで、痛みはないので一瞬悪いものではないかと緊張する。少なくとも前回R先生の所に行った時にはこんなものは無かったはずと思い、不安に駆られてネットで色々調べてみると、どうもフィステルというものらしいことが分かってきた。

▶フィステルというのは、歯茎にできた小膿袋で、原因は歯根が細菌感染したことで歯根部に膿がたまり、それが細い管を伝って歯茎に染み出てきたものである。痛みは殆ど感じないのだが、その部分を指で押さえると内部に違和感を感じる。ネットの画像と鏡に映った自らの歯茎の斑点を必死に見比べてみたところ、やはりこれはフィステルのようなもので、いずれにしても口腔ガンではないようだ。とにかく早速日本橋の歯科クリニックのR先生の診察を受けることにする。

▶R先生に歯茎の部位を見せると、先生はすぐに分かったようだった。早速レントゲンを撮る。その画像を見ながら先生から説明を受けた。曰く、これは歯根に溜まった膿が歯茎に出たものだが、実は治療するのが大変難しい。おそらく歯科治療では最難度の部類に入る治療ではないかとのこと。膿の溜まった歯根をキレイにするには3本ある歯の根管に極細の治具を入れて細菌感染部位を取り除き、その後に薬を封入して部位を固めるのだが、細菌汚染部分を完全に取り除くのが難しいので、よほど治療が上手くいっても再発率が50%は残るのだそうだ。しかも一旦再発すると根治は難しく、最終的には抜歯をするしか方法がなくなる。

▶R先生からは現実的な方策として痛みがない場合は放置もありうると言われたが、まさか歯茎から膿が出ているのをそのまま放置もできないので、再発リスクを理解した上で治療をお願いすることにした。当日は時間がないので、治療の開始は次回からということになった。その後再訪し、レントゲンを撮って慎重に該当する歯を特定したが、それはかなり昔に治療した歯だった。早速歯冠を外して歯を少し削り根管を露出させ、そこから手探りで極細の治具を歯根に向かって挿入する。

▶およそ30分近くの悪戦苦闘を経て、その部位に仮のセメントを埋めてひとまず治療を終えた時は心底ホッとした。こちらは大口を開け続けていたので、顎ががくがくと震えるのには参った。インプラントの手術もそれなりに時間がかかって大変だが、こちらはそれと同じかそれ以上だった。その後R先生から説明を受けたが、2本の根管は治具が挿入できたので治療は進んだが、残りの1本は根管が複雑に曲がっているため治具が入らず、次回もう一度トライをしてダメだったら大学病院を紹介するのでそちらに行って欲しいと言われた。レントゲン写真を見ると確かに1本の根管は曲がっている。

▶その次の治療も3本目の根管への挿入が上手くいかず、結局東京医科歯科大学付属病院へ紹介状をもらって行くことになった。R先生が上手くいかない治療を大学病院ならうまく治療できるのだろうかという疑念は残ったが、とにかく3月1日の大学病院の初診の予約をもらった。R先生からは、大学病院の根管治療は極めて混んでいるので下手をすると治療開始が数ヶ月先になるかも知れず、その場合は他の病院への紹介も考えるので相談して欲しいと言われた。

▶3月1日、紹介状を持参してお茶の水東京医科歯科大学に行く。ここは毎日1700人の患者が訪れる全国一の規模を誇る総合歯科病院で、渡されたパンフレットには、世界最高水準の治療を保証しますと書いてあるから、プライドは相当高い。10時15分に総合診療科に行く予定だが、30分前には総合受付で初診の受付をしなければならない。遅れると大変なのでかなり前に受付を済ませ、総合診療科の受付で待つこと数十分。名前が呼ばれたので診察室に入ると、そこには10台くらいの診療用の椅子が並列に並んでいて、30代と思しき男性医師が初診をしてくれた。

▶R先生からの紹介状を読んだその医師は、治療を開始する前にこう言った。「大学での専門の根管治療は大変混みあっているので、実際の治療開始は半年後になる可能性がある。それでもよければレントゲンを撮ったのちに治療予約の手続きに入るが、そこまで待てない事情があるなら、別の大学病院に行ってもらってもかまいません。どうされますか?」

▶R先生から事前に注意は受けていたものの、いきなりこう言われてもすぐに返答はできない。何度かのやり取りを経て、とりあえず半年後の予約手続きだけ進めることにし、その上でもう一度R先生と相談したうえ、待てないとの結論がでたら予約キャンセルすることで了解をもらった。その後、地下のX線検査室で歯茎の撮影をして、再度初診担当の先生の診察を受ける。

▶診断は意外だった。X線写真で見ると、3本目の歯根が割れている恐れが高いので、根管治療を進めることは難しいという。その旨、R先生にレターを書くので受付で待っていて欲しいと言われる。レントゲン写真を見ると、確かに割れているように見える。実は先週ポテトチップスを食べている時、当該の歯の一部が欠けてしまい、ここに来る前にR先生に応急措置をしてもらったのだが、その時歯根部分にも割れが入っていたのかも知れないと思い出した。

▶受付前で待っていると初診の医師が出てきたのでレターをくれるのかと思いきや、また診察室に来て欲しいという。再度X線写真を検証したところ割れていると思ったのは実は違うかも知れないとのこと。つまり最初に戻って、6ヶ月先の予約を入れることは可能なので、それでいいかと言うので、歯根が割れていないのなら結構なことなので、そのまま治療を進めることに異議はないと答えた。

▶結局3月1日は、東京医科歯科大学付属病院でレントゲンを撮って半年先の予約を入れて、1440円を支払って千葉まで帰ってきただけだった。ただ、果たしてこのまま治療が進むのかどうか、やはり歯根は割れているのではないか、その場合は結局抜歯することになるのか、そうするとその後は入歯またはインプラントになるのか、等々いろいろ考える。

▶現在のところ、セメントで仮詰めした歯の具合はいたって良好だ。面倒だからこのままでもいいような気がしてくる。それにしても健康保険を使って誰でも世界最高水準の歯科医療の恩恵にあずかれるというのは日本に住む幸せを実感する話だが、実際のところ全く容易ではない・・・。